アメリカで大流行し、アジアのベトナムや中国でも爆発的に競技人口を増やしている「ピックルボール」。先日、高級ブランドとしてピックルボールのラケット「パドル」を製造し、対立する連盟の仲介を行うなどピックルボールの環境整備に貢献しているヨーラ社のリチャード・リーCEOが日本を訪れた。
もともとヨーラ(JOOLA)はドイツの老舗卓球ブランドだったが、リー氏が2019年に買収してから、まもなくピックルボールの市場に参入し、成功を収めている。
アメリカでは競技人口が500万人を超えており、いたるところにピックルボールのコートができ、アメリカ国内には4万コートが設置されているというデータもある。さらに、通常のテニスコート1面でおよそ3面のピックルボールコートが取れ、ネットも可動式になっている。アメリカの東部にはインドアのピックルコートも増加している。
2028年のロサンゼルス五輪のエキジビション競技、もしくは2032年に五輪競技参入を狙っているとリー氏は語る。
日本でも大都市ではピックルボールのコートを確保するのが難しいが、リゾート地などで小規模なスペースを活用し、高い稼働率が見込まれれば、今後日本でも競技人口が増えるだろう。ピックルボールはラケットスポーツとして、テニス、ソフトテニス、バドミントン、卓球のエッセンスを取り入れた混合型スポーツのようにも見える。短期間で上達できると言われているため、参加するハードルは低い。
現在、テニスをしていた人や、日本でのソフトテニス選手がピックルボールに流れているとされている。アウトドアのピックルボールと卓球は無関係でいられるわけではない。オーストラリアの卓球代表選手がピックルボールに転向した話も耳にする。
さらに、卓球メーカーのヨーラがピックルボールのパドル(ラケット)製造・販売で成功を収め、環境整備にも力を入れている。他にも、スウェーデンのスティガ社がすでにピックルボール用のパドルを製造・販売している。
ほとんどがカーボン素材で作られているパドルは、緻密な卓球ラケットを作ってきた卓球メーカーにとって高いハードルではないだろう。競技用のパドルは2万円から5万円で販売されており、昨年12月の有明での競技会のブースでは1本5万円のラケットが普通に売れていた。専門店がないことも一因だろうが、セレブ感が漂っていた。
これらの動きがきっかけとなり、以前香港卓球協会が提案した「卓球のラケットの素材を自由にすべき」という提案が再燃する可能性も否定できない。
今後、卓球やテニスの愛好者がピックルボールに転向することも考えられる。メーカーにとってもビジネスチャンスが広がる一方、競技人口獲得の競争も生まれるかもしれない。「アウトドアのピックルボール」と「インドアの卓球」が共存する形が理想的である。
<タイトルPHOTO INAGAKI>
社員数315名。ヨーラを買収し、大きく発展させた男、リチャード・リーとは何者なのか
リチャード・リー「ヨーラを買収するのは自然な流れでした。そして2021年、ピックルボールと出合いました」
リチャード・リー「卓球で学んだすべてが、ピックルボールで役立ちました」。急成長するピックルとヨーラ社
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