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日本生命・村上監督「前田が陰のMVPです。彼女がいなければチームの優勝はなかった」

 

Tリーグ3連覇を決めた日本生命レッドエルフ

 

2月28日にTリーグの女子ファイナルで勝利し、リーグ3連覇を達成した日本生命レッドエルフの村上恭和監督。

2日後の今日、改めてリーグ優勝を振り返ってもらい、Tリーグを語ってもらった。

 

日本生命レッドエルフ 村上恭和監督

 

「前田が陰のMVPです。

彼女がいなければチームの優勝はなかった」

 

ーー今回の劇的な優勝を決めましたが、レギュラーシーズンはどうでしたか?

村上 レギュラーシーズンの21試合を振り返れば、前半戦は平野が出られなくて、良いオーダーが組めなかった。ダブルスでは前田と赤江と組んで8勝4敗。折返しの後半戦では、全日本後に故障した早田が出れなくなった。途中、前田も腰痛があり、ユ・モンユ、陳思羽なども出場した。ぼくは早めにオーダーを考えていますが、今シーズンは考えたとおりにはいかなかった。

 

ーーコロナ禍でのスケジュールはどうでしたか?

村上 スケジュールはそうタイトでもない。ホーム&アウェイでいろいろなところに行き、まとめて試合をしているので移動距離はそう長くはない。ただ、コロナ禍で食事がテイクアウトになるなど、遠征先でリラックスできなかった面はあります。それに無観客の会場でどのように闘争心を高めるのかは難しい面もありました。

 

ーー迎えたファイナルでは窮地に追い込まれました。

村上 ダブルスは予定どおりで、2番の森が石川に負け、1-1で迎えた3番の早田は彼女の悪いところが出た。ボールを絞れずに打ちミスが出てしまった。開幕戦でも負けているカードです。こちらはダブルスで1点取り、シングルスで2点取るオーダーで、早田が負けたのは誤算でした。故障明けで試合勘が戻っていなかったのでしょう。木村と早田は今まで1勝1敗でしたが、ファイナルの木村はシーズンで一番良い出来だった気がします。

 

2回のマッチポイントをしのいだ平野美宇。「ピンチに強い選手と再認識」(村上監督)

 

ーー1-2での4番は平野対長崎です。

村上 対戦成績では有利です。平野も長崎は得意としている相手だったのですが、思わぬ展開になりました。長崎はサービス、レシーブからの戦術がうまくなっていて、今シーズンのTリーグでは一番成長した選手でしょうね。

一方、平野も常に冷静に試合はできていました。ベンチに戻ってきても、今これを待たれているとか、しっかり戦術を自分でしゃべれるし、興奮もしていない。9-10でマッチポイントを取られてから、ぼくはフォア前へのサービスが良いと思っていたけど、待たれているからとミドルへサービスを出した勇気も素晴らしく、改めて平野はピンチに強い選手だと再認識しました。

 

ーー平野が踏ん張り、ラストのヴィクトリーマッチは早田対木村の対戦でした。

村上 前半戦で勝っても負けてもヴィクトリーは早田で行くと本人にも言ってました。石川が来ると思っていたけど、木村だったのでびっくりしました。ただ邱建新さんの考えもわかります。3番が終わった時点で5番のオーダーを提出しなければいけない。3番で木村が早田に勝っていたので、そのイメージがあり、木村を使ったのでしょう。ただ、早田はヴィクトリーには慣れているし、腹をくくっている選手です。

出だしは完璧で、5-3、8-5、10-6と進み、10-8でサービスを持っていたのに10-10に追いつかれる展開で、負けてもおかしくない試合だった。ただ、10-10で相手の横下回転のサービスをミドルにビタッと止めた。あのストップレシーブはあの試合のNo.1レシーブで、次の4球目をフォアハンドで決めたので、そこで勝負があった。

 

ファイナルのトップで貴重な勝利をあげた前田(左)・平野のダブルス

 

リーグMVPを獲得した早田ひな

 

ーー3連覇ですが、今までの2回の優勝とは違うものですか?

村上 そうですね。意味は違いますね。コロナ禍でどのチームも外人がなかなか来ない中、日本人対決が多かったし、どのチームもダブルスに苦しんでいました。最後に、ダブルスを固定したチームが1位と2位でした。

うちのチームでは、前田が陰のMVPです。彼女がいなければチームの優勝はなかった。腰痛で苦労していましたが、ダブルスに徹して練習もしてくれました。

 

ーーTリーグは3シーズンを終えましたが、リーグが選手たちに与えている影響とは何でしょうか?

村上 日本生命というチームに限って言えば、日本リーグに加盟している時でも会社は全面的に応援してくれていました。ただTリーグでは会社以外の多くの方も応援してくれます。石川のように日本代表として日の丸を付けて試合に出る選手は、その時は応援してもらえるけれども、全日本に出る時には他の選手とはライバルになります。彼女も卓球王国のインタビューで語っているように、多くの方に応援していただいているのを実感する、これはTリーグならではの良い面だと思います。

女子では今まで高卒で日本リーグに入ってきて強くなるという選手が多かったのですが、男子のように大卒で企業に入っても、大学の時に強くなる勢いが止まっていたので、企業で強くなる選手は多くはいなかった。しかし、Tリーグでは高校生でも大学生でも試合に出て、経験をすることでレベルを上げていくことができる。自分のファンも作りながらお金をもらうことができている。男子のリーグも大いに盛り上がっています。

このTリーグは素晴らしい組織になりつつあり、日本の強化の柱になっていくでしょう。

 

優勝を決めたあとに卓球ファンに熱いメッセージを送った村上恭和監督(日本生命レッドエルフ)。ベンチでの落ち着きぶりは、まさに名将と呼ぶにふさわしい貫禄がある

 

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