人口320万人、面積は鹿児島県とほぼ同じ。中米のカリブ海に浮かぶ小さな島、プエルトリコが生んだ天才。父ブラディミル、母マランヘリという元卓球代表選手を両親に持つアドリアーナ・ディアスは4姉妹の三女。北南米のチャンピオンを決めるパンアメリカ選手権で4度の優勝を飾り、パンアメリカン競技大会(2019年)で優勝し、「アメリカ大陸の女王」の存在感を放つ。
日本と比べれば「恵まれていない」という言葉を当てはめる人もいるだろう。しかし、ディアスは日本選手が失っている大切なことを教えてくれる。「私のモチベーションは卓球のために旅行して、友だちができて、新しいコーチや知らない言語に触れながら卓球をやることでした。それらのすべてが楽しかった」。
「私は試合で負けた時に、自分の環境、国のせいで負けたと思ったことはないんです。強くなるためには自分ができる中で一生懸命練習しなければいけない。卓球を続けていくことは自分が決めたことだから、自分の環境を非難したり、マイナスに考えることはしない」とも語る。気がつけば、世界ランキング12位で、昨年の最高位は9位だ。
「卓球はとても複雑なスポーツです。さまざまなプレースタイルがあるし、用具の種類もそうだし、スピン、スピードの要素もある。複雑であり、クレイジーなスポーツなんですよ」と語った彼女に、「卓球がクレイジーで複雑だと言ったけど、なぜそのクレイジーなスポーツが好きなんだろ」と聞くと、「卓球はもっとも難しいスポーツだからこそ楽しいんですよ」と笑いながら即答された。
大阪の邱建新のもとを訪れ、教えを請うたA.ディアス。彼女が世界の舞台でメダルを獲ることになれば、それはグローバルスポーツの卓球にとって「大事件」になることは間違いない。その可能性を彼女は秘めている。
(卓球王国3月号・1月20日発売号より)
↓卓球王国の取材で得意のラケット回しを披露するA.ディアス。見事な高速回転だ
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