3月16日、中国チームはコーチ陣による会議を実施。パリ五輪・シングルス代表の選考レースが残り2カ月を切ったこのタイミングで、女子チームのパリ五輪・シングルス選考方法を改定することが決定した。
もう一度おさらいしておくと、中国ではパリ五輪のシングルス出場権は、世界ランキングポイントに国際大会(個人戦・団体戦)での成績に応じて与えられるボーナスポイントを加えた「パリ五輪シングルス選考ポイント」で、2024年5月7日時点で上位2名に入った選手に与えられると発表されていた。今回、女子チームの選考方法改定の主なポイントは、以下の3点。男子チームの選考方法は変更されていない。
1. 5月4〜11日に行われる『サウジ・スマッシュ2024』まで選考期間を延長し、同大会終了後の「パリ五輪シングルス選考ポイント」のランキングで、シングルスの代表2名を決定する。
2. 該当する大会(WTTチャンピオンズ仁川・女子ワールドカップ・サウジスマッシュ2024)で海外選手に敗れた場合、優勝時に獲得するボーナスポイントと同じポイントを没収する。
※WTTチャンピオンズで敗れた場合:−1,000ポイント
女子ワールドカップ/サウジスマッシュ2024で敗れた場合:−3,000ポイント
女子ワールドカップでグループリーグで敗退した場合:−3,000ポイント
3. 2023年の世界卓球ダーバン大会(個人戦)以降で、国際大会において海外選手に5試合以上敗れている選手は、パリ五輪のシングルス出場権を取り消す
中国の卓球雑誌『ピンパン世界』によれば、中国国家チームの李隼総監督はこれまでの選考方法について「対海外選手の実績についての評価が欠けていた」と述べている。「世界卓球釜山大会(団体戦)では、特に五輪シングルス代表選考の規定によってオーダーが制限され、チームに警鐘を鳴らす結果となった。選考方法を適正なものにしていかなければ、来るパリ五輪で『隠患(潜在的なリスク)』となるだろう。今回の改定の主な目的は、パリ五輪での任務を無事に達成するため、最強の布陣を選ぶことだ」(李隼総監督)。
2月の世界卓球・釜山大会(団体戦)では、男子が準決勝で韓国に3−2、女子が決勝で日本に3−2。ともに3番を終えて1−2のリードを許し、大いに苦戦を強いられた中国。その中で、女子チームだけが選考方法を改定したのはなぜか。続く李隼監督のコメントは、今回の改定のターゲットになった選手を名指ししている。
「この1年で、王芸迪は多くの重要な大会の重要な試合で、海外選手に敗れている。これは国家チームの五輪代表選考の歴史の中でもあまり見られなかったことだ。コーチ陣の協議により、彼女はこのままパリ五輪の女子シングルスの代表選考レースに加わるのは相応しくないということで意見が一致した。
現状では孫穎莎、陳夢、王曼昱の3選手が代表選考レースをリードしている。彼女たちには東京オリンピックで目標を達成した豊富な経験があり、特に孫穎莎は今回の代表選考レースにおいて素晴らしいパフォーマンスを見せている。したがって、客観的に見て、今後は女子シングルスの二人目の代表争いがさらに熾烈になることを期待している」(李隼総監督)
五輪代表選考レースの渦中に、「孫穎莎は五輪当確、王芸迪は失格」というまさかの発言。後付(あとづけ)の規定によって出場資格を取り消すというのは、「公平・公正・公開」をスローガンとした透明性の高い選手選考からの方針転換とも言える。
しかし、王芸迪は今回の選考期間で海外選手に6回敗れており、そのうち5回が日本選手(早田ひな・2回/平野美宇・2回/木原美悠・1回)。これまで多くのチャンスを王芸迪に与えてきたコーチ陣としても、パリ五輪団体決勝での日本戦を見据え、「我慢の限界」ということか。常に臨機応変、目標を達成するために最も合理的な手段を選ぶのが中国流だ。
今回の選考方法の改定が発表されたのは、シンガポールスマッシュの大会期間中。王芸迪が女子シングルスで決勝に進出する中、非情の通告とも言えた。その後、王芸迪は決勝で王曼昱に1−4で敗れて準優勝。発表のタイミングや、王芸迪対王曼昱戦の5ゲーム目が11−1と一方的な内容であったことから、『微博(SNS)』で「假球(八百長・勝利者操作)」がトレンド入りするひと幕もあった。
続いて、現時点での中国女子チームの選考ポイントランキングの状況などをお伝えしましょう(以下の記事)
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