東京五輪金メダリストの水谷隼が第一線から退き、1月末の全日本卓球選手権大会で世界ランキング4位の張本智和が6回戦で敗れる中、驚異的なフットワークと両ハンドからのパワードライブで優勝をもぎ取ったのは戸上隼輔だった。
優勝した翌日に卓球王国はロングインタビューを行った。話しぶりは穏やかで謙虚だが、その発する言葉は力強い。
文言だけを拾えば、ビッグマウスとも言える。そう言えば、かつて卓球界にもビッグマウスと言われたチャンピオンがいたが、新全日本チャンピオンはプロレス好きではあるが、ヒール(悪役)ではない。
以下は「チャンピオンインタビュー」からの抜粋。
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ーープロレス好きの君としては、優勝が見えてきた時、最後の(ウイニング)ポーズを考えていたでしょ。
戸上 はい(笑)、プロレス好きとしては大会に入ってから「これで行こうか」と何パターンか考えてました。会場でやったのは、「バレットクラブ」というチームの気合を入れるポーズだけど、本当にやりたかったのは、内藤哲也選手(新日本プロレス)のポーズがカッコよくて、片足をついて左手の親指と人差し指は目のところ、右手はを突き上げるポーズがあって、それをやりたかった。
ーーそれを見たかったな(笑)。忘れたの?
戸上 いや、その二択があって安パイのほうに行ってしまいました(笑)。来年にやらせていただきます(笑)。
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ーー張本智和と同期の宇田幸矢(元全日本チャンピオン・明治大の同期)の存在は戸上君にとってはどういうものですか?
戸上 二人がいてくれたからこそ今の自分があると思っています。特に張本は、これから彼の背中をずっと見ていく選手であり、いつか彼に並ぶ実力をつけ、追い越していくべき選手です。いつか絶対超えなければいけない。張本と並んで戦うのではなく、追い越しながら戦いたい。大きな存在です。
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ーー優勝直後のインタビューで「水谷さんには言いたいことがたくさんある」と言っていた。彼は「日本男子は氷河期が来る」と予言しています。
戸上 氷河期ということでは、ぼくも言いたいことがあります。今の状態では本当に氷河期かもしれないけど、ぼくが日本男子を引っ張って、ぼくが先頭に立つことでみんなをレベルアップさせる存在になりたい、ということを言いたかった。
「水谷隼がいなくなった日本」は今が変わるべき時で、新時代の最初にぼくがトップに立って、いつか張本を越して、みんなにぼくの背中を見せられるようになりたい。
(卓球王国最新号・戸上隼輔のチャンピオンインタビューより)
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東京五輪金メダリストの水谷隼の「氷河期予言」。
静かな新チャンピオンの戸上隼輔は、その氷河期を溶かすだけの熱いマグマを彼自身の中に持っている。張本とともに日本男子を世界のトップに押し上げるのか、それとも 本当に水谷の予言のように氷河期を迎えるのか。
戸上の右腕に日本の将来が託されているとも言えるし、このチャンピオンを押しのけるような若手の出現も期待したい。
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