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王者、恐るべし。 水谷隼[対談アーカイブ]石川佳純

ここから上、

中国のトップ4人に対しては 

大きな壁がある(水谷)

 

ロンドン五輪からもうすぐ3年が経つ。悔恨に暮れた水谷と、メダル獲得で歓喜の涙を流した石川。来年に迫ってきたリオ五輪では、二人はシングルスと団体でのメダルを期待されている。

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●--来年(2016年)はオリンピックもあるし、周りもだんだん雰囲気が変わっていきます。二人にとってのオリンピックとは何だろう。

石川 まず簡単に出られないのがオリンピックで、出ることで成長できるのがオリンピック。4年に1回の周りとの競争が自分を強くしてくれる。リオの日本代表もあと半年後(で決定)なので、絶対最後は競ってくる。ロンドンの時と状況は違うので、上を見てもっともっと強くなって出場権を取りたい。

水谷 北京からロンドンまでもあっという間でしたね。

 

●--やはり石川選手はオリンピックがターニングポイントになっているでしょ。

石川 オリンピックは本当に出るのが大変なんですよ。ロンドンの時と今回は違う。今は自分の腕を前よりも信じています。だからしっかりやれれば出場権を取れると思っています。ただ、しっかりやるという意味は、守りになるのではなく、もっともっと強くなって、今より(今年)9月に強くなっていればリオには出られるという自信はついている。焦る気持ちはないけど、危機感はいつも持っています。キープしようと思った瞬間に守りに入るから、もっと上に行きたいという気持ちを持たなきゃいけないし、グランドファイナルで優勝して、良い感じで上がってきて、ここからさらにもう一段階上に上がろうとする時に厳しさを感じています。勢いだけではなく、ここから上に上がるために実力をつける、成長していく時期だと思う。

 

●--ロンドンでメダルを期待されたのに、悔しい思いをした水谷選手。一方で、女子はメダルを獲り、3人娘が大きく取り上げられた。正直、その様子をどのように見ていたんだろう。

水谷 メダルを獲ることは素直にすごいと思いました。自分自身、試合で負けた悔しさはあったし、シングルスよりもメダルの可能性が高かった団体のほうが悔しかった。ただ女子のシンガポール戦は本当に勝ってほしかった。メダルを獲る瞬間を見たかったし、その場に居合わせたことがうれしかった。

 

●--今二人は奇しくも同じ世界ランキング5位です。そこに到達するまでの喜びや苦しさがあると思うけど。

水谷 今はうれしさはないですよ。

石川 最初に5位になった時はうれしかった。

水谷 最初はうれしかった、確かに。100位くらいから自分が上がっていくのは楽しみだった。

石川 今は上がった時しか見ない(笑)。ランク下の選手とやると、思い切ってぶつかってくるので「ええ、こんなことしてくるの!?」とビックリします。「あれ、さっきの試合と違う!」という相手が多くなった気がします。

谷 ぼくの場合は逆ですね。リードしたら相手が諦めてくれます。力の差を感じるのかな。

石川 確かに最初から諦めてくれる時もありますね。力を出してないなと感じることがある。その逆もあるけど。

水谷 ただ、ここから上、中国のトップ4人に対しては大きな壁がある。ここから下の20位までは僅差ですけどね。

石川 最近はランキングをあまり気にしないようにしています。昔は、「この人10位か、やっつけよう!」という感じだったけど、(自分が)5位になったらあまり気にしない。

水谷 自分の世界ランキングは上がったけど、たとえば自分が30位だった時の10位くらいの人と、今自分が5位で同じ人が10位だったりすると、自分が下にいる時は「上の人に勝ちたい!」という気持ちがあったけど、自分が5位になったら勝って当たり前というようになっている。勝った時の喜びは減ったよね。

石川 確かにそうかも。5位だから下の人には負けられない、勝ちたい、勝てるんじゃないかなという気持ちですよね。もちろんファイナルやツアーで優勝したらすごくうれしい。

水谷 ぼくは誰に勝ってもうれしさはあまりない。中国のトップ4人に勝たないと。

石川 今までは、国際大会ではプレッシャーを感じずにやってきたけど、今はランキングを1個上に上げるのはとても難しいのをすごく感じています。10位から6位まで上がるのよりも、6位から5位に上げるのが大変です。

水谷 期待されるのは結構つらい。5位だから(メダルを獲る)チャンスが一番あるんじゃないかと思われるけど、トップ4人との壁は厚い。ぼくだろうが丹羽だろうがメダルを獲るチャンスは同じ。5位だからベスト8に入る確率は高いかもしれないけど、メダルを獲るチャンスは同じですよ。

 

●--この対談が掲載されるのは世界選手権蘇州大会の直前ですが、自信のほどは?

石川 世界選手権では自分より下のランキングの人には負けないこと、一戦一戦をしっかり戦うこと、それだけを考えて戦いたい。その上に中国選手との試合があるし、金星があるけど、そこまで行かないことには(ランキングは)上がらない。ただ5位になったことは誇りに思います。

水谷 ぼくは(蘇州大会)1種目しか出ないし、全く自信がない。

石川 ランキングをここから上げるのは大変ですよね。だけど、その分、やりがいがある。もっと上に行けると思ってやっているから、もうダメだなとは思わないし、まだまだこれからだなと思います。

水谷 すごいな、真逆だな(笑)。ぼくは本心で言えばもうダメですよ。

石川 (笑)そう言って試合でウワーとやるじゃないですか。

水谷 最近、心が弱いんですよ。刺激がほしいですよ。

石川 そう言っているけど、(水谷君は)たぶん大丈夫ですよ(笑)。

 

●--日本では女子のほうが競り合っている感じは相当にある。

石川 女子は執念があります。大事なところで絶対負けない。負けそうな時でも絶対最後まで諦めない。それはいつも思う。平野さんも福原さんも勝負に対する執念はすごいです。絶対負けない、絶対諦めない、何とか勝とうとする執念は尊敬しています。水谷君は今言っているのは口だけで、本当は執念がすごい(笑)。試合になったらすごく粘りますから。

水谷 それは頑張るよ、試合になったら諦めないから。

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