卓球王国 2024年4月22日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
トピックス

王者、恐るべし。 水谷隼[対談アーカイブ]石川佳純

ボールを打っていない時に

どれだけ卓球のことを

考えているかが

勝敗を分けるんだと思います(石川)

 

 

●--スポーツで上に立つ人、ビジネスの世界でも成功する人はオブセッション(Obsession)、取り憑かれたところがある。チャンピオンになる人は必ずそういう面があるのではないだろうか。朝起きた時から勝つこと、チャンピオンになることを考える。寝る時もチャンピオンになること、勝つことを考えて疲れて寝るというような。そういう取り憑かれた感覚は自分の中にあるのだろうか。

石川 ありますね。もともと私は習い事しても続かない、すごく飽き性なんです。でも卓球は違う。そういう(取り憑かれた)部分がないと朝から晩まで練習できないと思う。

水谷 日常では卓球のことを常に考えています。人一倍卓球のことを考えている面はあると思っています。

石川 そうじゃないと勝てないですよね。練習する、ボールを打つことだけが練習じゃない。ボールを打っていない時にどれだけ卓球のことを考えているかが勝敗を分けるんだと思います。

 

●--お互い聞きたいことをどうぞ。

水谷 佳純ちゃん、1日どのくらい練習をやるの?

石川 午前中は10時から1時くらいまでやって、午後は4時から8時半くらいまでやることがありますね。フィジカルトレーニングを含めて。

水谷 7時間から8時間の練習か。いつ休むの?

石川 日曜日。試合の前はあまり休まないですね。疲れたら休みます。意外とできるものです。

水谷 見習います。これからもっとやります(笑)。

 

●--なぜそれを聞いたの?

水谷 いや、単純にどのくらいやるんだろうと思って。トレセン(トレーニングセンター)でやるのはわかるんです。トレセン以外にどれだけやるのかなと思って。

石川 いや、絶対水谷君は見えないところでやっています。そうじゃなかったら一番になれるわけないですから。打つ時間が仮に40分でも家に帰ってからビデオ見てたりしてますよ、絶対。

水谷 コツでしょ? コツつかんだら勝てたりしない? 勝つためのコツがあるんですよ。

石川 私は、相手に嫌なことをされた時の対処法を水谷君に聞きたい。嫌なことをされた時にどういうふうに考えて試合をやるのか。

水谷 やっぱり見せ球を出すよね。ミスしてもいいから強気で攻める。それをやれば大事な局面で相手は出してこない。急に最後に嫌なことをやってこないから。試合の前半で、入っても入らなくても嫌なボールを打ちにいっておけば、相手は大事なところではそれを出してこない。

石川 わかりますね。気持ちが守りだとすべてのことが難しくなってくる。気持ちが攻めている時には思い切ってできるのに、一度守りになると、勝ちたいという前提でやるから守りになることがあります。

今まで勝っていた相手に、前回負けた。その選手とまた試合をやる時にはどういうふうに戦いますか? どういう心理状態でやりますか?

水谷 佳純ちゃんはどういう気持ちでやるの?

石川 負けた反省を生かして次をやろうと思うかな。それよりはずーっと勝っている相手のほうが嫌かな。

水谷 ずっと勝っている相手にオリンピックとかの舞台で当たるのは嫌だね。今まで勝っている相手なのにここで負けられないなとプレッシャーがかかる。

石川 私は、ずっと勝ってる相手だから、負けないぞと思える。

水谷 いつも微妙な差で勝っている相手は?

石川 それは嫌だ。僅差で勝っている相手は嫌ですね。

水谷 そこで負けたら一生引きずるよね。まるで(2004年アテネ五輪決勝の)柳承敏に負けた王皓のように。だから絶対引きずりたくないから必死でやる。

 

●--他に石川選手に聞きたいところは?

水谷 全日本でも世界選手権でも出だしでどんなサービスを出すの?

石川 相手によっても違いますよね。相手によって最初から長いサービスを出すこともあるし。

水谷 1ゲーム目から得意なサービスをバンバン出していって、1ゲーム目は取るんだけども、その後から打つ手がなくなることもある。最初は相手の様子を見ていくのかどうか、聞きたい。1ゲーム目で様子を見て、相手の弱点を探っていくのか。

石川 水谷君は様子を見るでしょ? 試合を見てそう思います。私は自分の力を最初から出していく。それに対応されたら次の手がまだある。余裕がないと様子を見るのは無理です。私はそういうことをすると負けてしまうタイプ。初めての相手の時には様子を見るけど、お互いの手の内を知っている場合は様子を見ない。

水谷 オレは結構様子を見ますね。

 

●--お互いが日本の男女を見た時にどう感じているんだろう。

石川 日本男子はみんな自分の武器を持っているし、個性が濃いですね。

水谷 男子よりは女子のほうがシステムができていると思います。個人個人の選手に強化法ができている。

石川 女子の場合は自分でやらないと練習相手もコーチもいない状態だから、良くも悪くも自分しかいない。私も男子の合宿に入れてもらったりしていますけど、普段は個人で環境を作っていくしかない。

関連する記事