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インタビュー

卓球と笑顔で仲間を繋ぐ。神田テーブルテニスセンター・中岡賢次郎

ーー神田テーブルテニスセンターのジュニアチームは全国ホープス大会にも出場しています。

中岡:全国ホープス大会には出ているけど、最近は本当に出ているだけ。ぼくも指導者として日本一になったことがあるから、それがどれだけ大変なことか分かっています。今の子どもたちや保護者の方に昔と同じことを言っても、昔みたいについてきてくれるかどうかはわからない。少なくとも、離れていってしまう子どもはいると思います。もちろん、強い選手を育てたい気持ちもあるけど、今は卓球の普及をメインに取り組んでいます。強くなりたいという子どもは中学から強豪校に預けて、ここにいる間はすごく強い選手に育てるのではなく、強くなりたいと思ってくれる選手に育てるようにしています。

05年度の全国ホープス選抜では、当時小学5年生だった谷岡らを中心にしたメンバーで見事優勝を果たした

今年行われた全国ホープス大会でも中岡はベンチに入った

 

ーーユニフォームも特徴的で、モチーフは野球のユニフォームでしょうか?

中岡:高知ファイティングドッグスという高知の球団公認のコラボウェアです。球団からデザインデータをもらったので、本当に野球のユニフォームと同じデザインになっています。毎年試合の応援をしに行ったり、うちの卓球場が選手1人の個人スポンサーとなって応援したりしています。逆に、球団の副社長がやっている、「高知県スポーツコミッション」という高知県のスポーツを盛り上げる団体があって、いつも合宿の後援をしてくれていますね。

高知ファイティングドッグスとのコラボで作られたユニフォーム

神田テーブルテニスセンターが個人スポンサーになっている選手のユニフォームには「神田卓球場」の文字が入っている

 

ーー地元と密着しているんですね。

中岡:できるだけ高知県のものをPRしていきたいと思っています。大会では地場産品を賞品にしたり、「はりまとやばし」という高知のゆるキャラとコラボしたTシャツを作って販売したりして高知をアピールしています。

高知の名所である播磨屋橋をモチーフにしたゆるキャラ「はりまとやばし」のコラボTシャツ

レジ前には高知県出身のイラストレーターである、デハラユキノリ氏が手掛けたフィギュアが置いてある

 

ーー中岡さんは海外との交流もありますよね。

中岡:17年前にホープス選抜で優勝した時、当時は海外遠征に限るという条件付きで20万円が貰えたんです。3月に行われるホープス選抜には6年生も出場できて、優勝しても6年生がすぐに中学に進学するので、その遠征費を使わないチームがほとんどでした。ただ、うちが優勝した時は5年生がメインで、6年生がいなかった。だから、その遠征費を使って選手たちと韓国遠征に行ったのが始まりでしたね。

その時にお世話になった韓国の先生がすごく良い人で、それから自分が韓国に行く度に食事に行っています。

ショップには今まで交流があった韓国選手のユニフォームが飾られている

 

ーー海外の人とは言語の壁もある中、どうやって仲良くなったんですか?

中岡:その当時はスマートフォンなんてなかったから、その場で辞書を使って言葉を引きながら会話をしていました。その姿勢が通じたんだと思います。あとは一緒にご飯を食べたりすることですかね。

ぼくは小さな縁をどれだけつなげられるかが大切だと思っています。よく社交辞令で「また会おう」とか言うけど、ぼくの場合は本気です。谷岡が出場したロッテルダムの世界選手権を観戦しに行った時も、ホテルが同じだったマルタ島の人と仲良くなって「今度マルタ島行くわ!」と言って、その2年後に娘と一緒にマルタ島に行きました。

 

ーー夏と冬には大規模な練習会(合宿)も開催していますよね?

中岡:サマーキャンプは今年で15回目でした。冬は次で20回目です。今年の夏には初めて海外の選手も大体的に呼んで開催しました。マレーシアからはジュニアナショナルチーム、台湾からは13歳以下の代表選手なども参加していましたね。日本からは幼稚園の年長からインターハイに出場している高校生まで幅広いレベルの選手たちが参加しました。

今年の夏に行われたサマーキャンプの様子

 

ーー今回の合宿には各メーカーも協賛していましたね。

中岡:普通はバタフライに声をかけたら、ニッタクには声をかけるのを控えたりするけど、いろんなメーカーに声をかけてみたら全部引き受けてくれました。140人の参加者全員に参加賞を渡すことができたので、ありがたいですね。

 

ーー話を聞いていると、行動力が凄まじいように感じます。そのモチベーションは何かあるんですか?

中岡:今回の合宿も、かなり常識を逸脱した企画でした。でも、意外とやってみたらなんとかなる。やる前に結果を出している人はうまく行きません。どうせゼロでも、やらなくてゼロよりもやってゼロの方がもしかしたらいつかプラスになるかもしれないですから。

 

ーー最後に、今後の抱負を教えてください。

中岡:強い選手を育てたい気持ちはあるけど、それにこだわらずにうちの生徒さん全員に卓球を楽しんでもらいたいです。あとは、合宿に来ている他のチームの選手が、合宿をきっかけに海外に目を向けたり、人とのつながりを大切にするようになってくれたら良いですね。将来的にはその子たちが指導者や協会スタッフになって、卓球界を支えていってほしいと思います。

 

ーー本日はありがとうございました。

●PROFILE なかおか・けんじろう

1971年8月21日生まれ、高知県出身。高知県立高知追手前高卒業後、一般企業勤務を経て2002年に神田テーブルテニスセンター(旧:ファーストステップ)を開業。05年度全国ホープス選抜優勝をはじめ、指導者として団体、個人で7度の日本一に輝く

神田テーブルテニスセンターのHPはコチラ

 

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