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帰ってきた女王の言葉vol.1[おかえり! カスミン]

ベスト8決定で四天王寺の先輩でもある小西杏を破った

「今年は意外に緊張しなかったし、

平常心でやれた。

技術を習得しようということに

頭がいっぱいだった」

 

――全日本は特別でしょ?

石川 マスコミの注目もあるし、権威もあるし、日本のチャンピオンってすごいじゃないですか。今年は意外に緊張しなかったし、平常心でやれた。技術を習得しようということに頭がいっぱいだった。特に試合があるからどう、というのはなく、コーチに言われたことをしっかりできるようにしようと思っていた。去年のほうが緊張したし、去年よりは自信がついて、何とかなるさ、という気持ちだった。勝つ時は勝つけど、負ける時は負ける、という感じ。

今回はジュニアがないから、違和感があって、少し調整が難しかった。大会2日目まではあまり良いプレーができなくて、コーチからは「最初からすこぶる良いなんてあり得ないから、1日1日調整していきなさい」と言われました。

前より体調維持は気にするようになりました。世界ジュニアで田中さん(礼人・全日本トレーナー)に教わって、今まで私は何をやっていたんだろうと思うほど、練習前、練習後、試合前、試合後のストレッチをやることで、体の動きが全然違う。

――最初の試合は森田彩音戦だった。

石川 やりにくかった。年下の人とやることがあまりないから。少し緊張しました。次の中島さんはもう少し競るかと思った。

――次の6回戦で当たったのは、福岡春菜に勝って上がってきた小西杏。

石川 この試合は本当にきつかった。途中でどうすればいいかわからなくなって、2―2になって、5ゲーム目をジュースで取ったのが大きかった。このゲームを落としていたら負けていたかもしれない。小西さんは強かった。去年の選考会でも負けていた相手だったから。

――次は準々決勝の渡辺裕子戦だった。

石川 3ゲーム目から急に足が動くようになった。このゲームからスイッチが入って絶好調になった。1ゲーム目も悪くはなかったけど、途中から足がすごく動くようになって、絶好調になったのが自分でわかった。「調子いい!」と思った。

 

愛ちゃんとできるのは楽しみだったし、

自分がどれだけ成長しているのか、

という気持ちで思い切ってできました

 

女子シングルスの今大会最大の見せ場は、準決勝の福原愛対石川佳純だった。二人とも準々決勝までの調子は悪くなかった。単に人気者同士の対戦ということではなく、その時点での世界ランキング8位(福原)と11位(石川)のハイレベルなゲーム。結果は、4―1で石川が福原を破った。

――準決勝は福原戦。ビッグマッチだった。マスコミもそこに注目した試合だった。

石川 試合前はワクワクしていた。愛ちゃんとできるのは楽しみだったし、自分がどれだけ成長しているんだろうという気持ちで思い切ってできました。周り(マスコミ)のことは全然気にならなかった。集中していたし、ボールを入れにいったら絶対勝てないと思った。

(福原戦は)1年前のジャパントップ12以来だけど、その試合のことは頭になくて、向かっていこうと思った。自分が思ったよりも落ち着いてやれたし、良いプレーが多く出た。入れにいくと失点するし、焦って強く打ちすぎてもダメだし、自分を信じて、絶対入るから1本1本しっかり打って、とコーチにアドバイスされて、そのとおりできた。勝った瞬間はうれしかったですね。

――決勝までの時間はどう過ごしていたんだろう。

石川 チームメイトが来てくれて、しゃべっていたので緊張もしなかった。ワクワクした気持ちで、どんな試合ができるのかな、練習したことをやろうとという感じです。コートに入ったら思った以上に緊張しなかった。藤井(寛子)さんはやりにくい相手です。勝ったり負けたりの相手です。作戦は考えたけど、余計なことは何も考えなかった。1ゲーム目を1―5でリードされていたのに逆転で取れたのが大きかった。

――福原選手も藤井選手も今大会は調子が良かったけど。

石川 二人の強さは十分わかっていたので、私は向かっていくだけでした。

――決勝の4ゲーム目、10―8でマッチポイントを取った。

石川 10―8でフォア前に横回転を出したらバックハンドでスマッシュされて、「はぁ~」となって、そこでコーチがタイムアウトを取って、「バック前にショートサービスを出して」と言われた。でも藤井さんはバックが強いから、どうしようと。でも迷わずに出して、得点できた。

――勝った瞬間は?

石川 信じられない! という感じ。その時は実感が湧かなかった。次の日の朝、新聞に自分が出てて、少し実感が湧いた。今思えば優勝するまではずっと緊張してました。ご飯はあまり食べられないし、睡眠も十分ではなかった。優勝した日の夜は寝られました。お祝いのメールに返事をしながら、携帯を持ったまま寝てました。

――記者会見では、具合の悪かったおじいちゃんを喜ばせたかったと言って泣いてしまったけど。

石川 おじいちゃんも会場に来てました。優勝して喜ばせたかった。優勝した日は、一緒にご飯も食べて、その日は顔色も良かった(笑)。

――チャンピオンになると見える景色が違う?

石川 全然一緒です(笑)。これからが勝負ですから。

――ベスト4に入って記録を作ったのは……。

石川 中学2年の時。3位に入っただけでも目ん玉飛び出しちゃいますよね。あの時は自分でもあり得ないレベルのプレーができて、それは自分の実力じゃなかったから、その後は自分の実力どおりの成績しか出ないのは当たり前。

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