●男子シングルス決勝
林詩棟(中国) 4、‐7、‐5、‐11、4、5、8 馬龍(中国)
WTTチャイナスマッシュの最終試合になった男子シングルス決勝は、大成功の今大会のフィナーレを飾るに相応しいエキサイティングなゲームになった。
決勝は、世界卓球のシングルスで3度のチャンピオンになり、五輪のシングルスでは2度の金メダリストに輝いた卓球界のレジェンド・35歳の馬龍と、今年9月にWTT大会のシングルスで2連勝を飾っている19歳の林詩棟の対決になり、林詩棟がゲームカウント1‐3のビハインドから3ゲームを連取し、大逆転で優勝を飾った。
決勝の馬龍は、前日の準決勝の梁靖崑(中国)戦で見せた先手必勝の攻撃プレーではなく、台上のストップとブロック、緩急をつけたコース取りで相手のミスを誘い、あまいボールは見逃さずにフォアドライブで仕留めるという守備力の高い「馬龍本来のプレー」で戦った。
その馬龍のプレーに対して、林詩棟はショートスイングながら尋常ではないスピードがあるバックドライブを浴びせて1ゲーム目を簡単に取った。しかし、馬龍は2ゲーム目からストップとツッツキで林詩棟のバックドライブを封じ始めると、そこから林詩棟が攻撃する場面が少なくなり、馬龍のペースで試合が進む。
4ゲーム目のジュースを馬龍が奪った時点で勝負ありと思われたが、林詩棟は劣勢でもひるむことなく、淡々と自分のプレーを貫く。5ゲーム目を林詩棟が一方的に攻めて取り返すと馬龍の足が止まり、防戦一方になってしまう。だが、レジェンドは死んでいなかった。
馬龍は最終ゲームを迎えて、気力と気迫でスタートダッシュをかけて8‐4とリード。だが、この場面になっても林詩棟は顔色ひとつかえずに1ゲーム目と同じようにプレーをしていく。林詩棟の両ハンドドライブが連続で炸裂すると7連続得点で試合をひっくり返した。スコアを気にしていないのか、負けるのが怖くないのか、はたまた強靭なメンタルの持ち主なのか。これまであまり見たことのないタイプであることは間違いないのだが、メンタル、技術を含めて林詩棟の計り知れない力を見た。
「決勝はゲームカウント1‐3で負けていて、最終ゲームは4‐8でリードされていたので、そこから勝てたことは自分にとっても驚きでした。1点ずつ取ることに集中し、リードされていても諦めない気持ちが逆転につながったと思っています」(林詩棟)
この優勝を受けて、林詩棟の世界ランキングは7位から3位にジャンプアップすることになりそうだ。1位の王楚欽、2位の樊振東に続くことになる19歳。今大会でさらに自信をつけ、林詩棟時代到来の予感がする。
ツイート