異例の11日間の日程で開催された今年のインターハイ・卓球競技。愛媛県・宇和島市での熱い熱い戦いの末、高校卓球界の頂点に立ったのは鈴木颯(愛工大名電)と赤江夏星(香ヶ丘リベルテ)の2人だった。本日、9月21日発売の卓球王国2022年11月号ではインハイ王者の2人に表紙を飾ってもらった。
鈴木と赤江、2人にとってシングルスタイトルはまさに悲願。11月号のインタビューではインターハイの舞台裏、自分を超えることができた転機、今後のことなどを、日本一に輝いた18歳の2人に語ってもらった。
小学生時代に全日本カブ、ホープスの2階級を制し、同年代のトップランナーとして愛工大附属中(現・愛工大名電中)に入学した鈴木は、中学1年の全中シングルスでいきなり3位に入賞。中学でもタイトルを次々に獲得するかと思われたが、以降は常に上位に進出しながらも頂点には立てず。全中に全日本カデット、全日本ジュニア、インターハイとすべて同士討ちで敗れてきた。
その中でも小学生時代からのライバル・吉山僚一には中学1年の全中で勝利して以降、勝ち星なし。タイトルへ向けて大きな壁となっていた。その吉山を高校最後のインターハイ、しかも決勝で破った鈴木。「同士討ちだし、リアクションは大きくないかな」と思っていたのだが、優勝を決めた瞬間、大きく吠え、そして涙。全身で喜びを表現する姿に「日本一」にかける強い思いが感じられた。
会場での囲み取材などでも、鈴木には「真面目」という印象を持っていたがインタビューでも、そんな性格が滲み出る。質問一つひとつに言葉を選びながら答えてくれた。ちなみに、3月の高校選抜から「気合」の坊主頭を貫いた鈴木。弊紙が創刊した1997年からのインターハイ男子シングルス優勝者を調べても、坊主頭はゼロ。それが令和の時代に坊主頭で、しかも2号続けて表紙を飾ることになった。自らの性格を「やると決めたらやり抜かないと気が済まないタイプ」と語っていたが、そんなちょっぴり古風な部分も彼の魅力だろう。
一方、これまで赤江の行手を阻み続けてきたのは「8(エイト)の壁」。全日本カデット14歳以下で準優勝があるものの、全日本バンビ・カブ、全日本カデット13歳以下、全中、全日本ジュニア、昨年のインターハイとことごとく準々決勝で敗戦。ポテンシャルの高さは誰もが認めるものの、その壁を破れないでいた。
そして迎えた高校最後のインターハイ、鬼門の準々決勝をフルゲームで突破すると、昨年優勝の横井咲桜、同準優勝の大藤沙月(ともに四天王寺)を連破。一気に日本一まで駆け抜け、満開の笑顔を咲かせた。
自然体で語る口ぶりが印象的だったインタビューでは「(準決勝・決勝は)今でも自分の感情がよくわからなくて」「優勝した後の気持ちも初めて味わってます」「表彰式でどうしたら良いのかわからなくて(笑)」と初々しいコメントもチラホラ。ガンガン攻めるプレー、試合中の佇まいから「物怖じしないタイプ」だと勝手に思っていたのだが、本人曰く「全然そんなことなくて、むしろ逆かも」とのこと。強豪校からの誘いもあった中、中学2年になるまで地元に残っていた理由も教えてもらったが、その理由も何となく微笑ましかった。
取材後も鈴木は全農カップTOP32からWTTユースシリーズ、赤江はアジアジュニア選手権と国内外の試合に出場。先日終わったばかりの世界ユース日本代表選考会では、ともに代表権も獲得した。春になれば高校を卒業して新たな舞台に飛び込む2人。この夏のインターハイが、さらに高く羽ばたく第一歩になることを期待したい。また、11月号では鈴木と赤江に自らのプレーを解説してもらった『王者の技 at インターハイ』も掲載。やり込んだ練習なども紹介しているので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。
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