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吉村真晴「新しいプレースタイルを自分が切り開いていく」」。全日本初優勝のインタビュー

破壊的な攻撃卓球で王者・水谷隼を破った吉村。ときに高校3年生

「まあ、自分のプレーをすれば
何とかなるっしょ」みたいに話してた。
リラックスしてました

誰もがぶるう全日本決勝の舞台。しかし、吉村真晴はその雰囲気を楽しんでいた。負けて失うものはない。ただ立ち向かい、自分のプレーをするだけと開き直った若者は、出足から素晴らしいプレーを連発して、王者を追い詰めていく。しかし、水谷隼も「世界のプレー」で対抗し、球史に残るような戦いを展開した。
最終ゲームにもつれ込み、7ー10とマッチポイントを奪われた後の5本連取。吉村の底知れぬポテンシャルにはみさえ感じる。それは彼の才能なのか、それとも周到な計算なのか。

ーー決勝進出を決めた時の気持ちは?
吉村 「あっ、やばい。決勝来ちゃった」と。水谷さんは堂々たる決勝進出で1ゲームしか取られてないし、とりあえず自分のプレーをしようと考えた。10月のスウェーデンオープンで水谷さんと対戦した時はいい試合ができていたんだけど、他の人との試合を見ると強くて、絶対勝てないと思ってました。
準決勝が終わって、丹羽が「もし良かったら自分を使ってください。そのくらいしか役に立てないから」と言ってくれて、「じゃ、お願いします」と決勝前に一緒に練習した。でも笑いながら練習してて、「ジャパントップ12みたいにすこられたらやばいな」と話していて、「いや、実際1ゲーム取ったら相当いいと思いますよ」と丹羽も言ってた。「まあ、自分のプレーをすれば何とかなるっしょ」みたいに話してた。リラックスしてました。練習も20分くらいかな。逆に水谷さんはフェンスで囲って、すごい練習してた。自分は開き直ってました。相手が相手ですから。相手は世界ランク一桁ですから。

ーー水谷選手は吉村君にとってどういう存在?
吉村 本当に雲の上の存在です。全日本5連覇の選手で、1回でも優勝するのが大変なのに、それを5回続けている。世界で戦っている人。いつかは超えたいと思うし、今回の全日本では勝ったけど、まだ全然です。

ーー決勝のコートに行く時には?
吉村 橋津先生に「堂々と行くか、ダラダラ普段どおり行くか」と言われて、堂々は無理なので、普段どおり行きました。

ーー決勝に初めて行く人はあの舞台でぶるうと言う。独特の雰囲気がある。
吉村 たくさんの人に自分の卓球を見てもらうのが好きなので、緊張はするけど、試合をやりながら楽しんでましたね。力まずにリラックスしてプレーできた。どんなに相手が強くても負けるとは思わない。何とかなるんじゃないかと思うし、水谷さんとやる前もフォアをバックハンドで抜くというイメージは持っていた。

ーーいきなり1ゲーム目を先取した。
吉村 本当に自分のプレーをしようと考えてました。勝ちを意識した試合の入り方じゃなくて、この場を楽しもうと思っていたし、「まぁ、相手はチャンピオンだからいいか」と。1ゲーム目をしっかり取れたのが大きかった。あそこで取られていたら4ー0で負けていたかもしれない。

ーー2ゲーム目も6本で取って、2ゲームを連取。相手(水谷)の様子が違うのは感じた?
吉村 6連覇がかかっている決勝というプレッシャーもあったと思いますけど、いつもならしないようなミスもちょっとあったし、台上で思い切って打ちにくるボールを入れにきたりとか。今までは先手ばかり取られていたのに、自分が先手を取ることができた。自分のサービスの時に攻めさせてくれるし、レシーブが前と違って厳しくなかった。台上からでもいけるし、長かったらそのままラリーをすればいいし、自分から攻めることができた。
2ー0でリードしてても、「いつまくられるんだろ」と思っていた。2ー2になった時にはやっぱり強いなと思った。それまで自分が水谷さんと試合をやる時に、あんまり声を出してくれなかったけど、今回は水谷さんも声を出していたから、「あっ、水谷さんが吠えてる」と、ちょっとうれしかった。

ーー3ー2になった時も優勝を意識してない?
吉村 全然意識してないです。3ー2になっても「3ー3になるでしょ、3ー3になってから勝負だ」と思ってました。そこで勝ちを意識してフィーリングをおかしくしてもダメだから。

ーー 最終ゲームは一進一退で進み、7ー7で吉村君はサービスミスをした。
吉村 「しょうがない」と思いました。試合中もそう言った。試合でも練習でも、思ったことをよく言うんですよ。「あっ、打点遅い」とか。決勝でも3ゲーム目か、4ゲーム目の最後の1本で水谷さんのボールがゴリ速で、思わず「速(ハヤ)!」と自分で言ったのは覚えてる。最終ゲームの3ー3でバックに打たれて、それをカットブロックして、その瞬間、「決まった、すごく切れてる」と思ったら、水谷さんが台の横からドライブでボールを入れてきた。「やっぱ、世界が違う」と素直に思いました。「こんな場面でできちゃうんだ」と。

ーー9ー7で水谷選手がサービスエースで、マッチポイントを奪った。
吉村 水谷さんが最後に思い切り回り込んで打ってくるのは何となく読めていた。10ー7の場面で水谷さんがサービスで、いろんな人との試合を見てると回り込んでくるから、ここでバックに返すのはセオリーどおりだなと。それならフォアに返して意表を突いて、それで打たれたらしょうがない。

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