●女子シングルス1回戦(ベスト8決定戦)
孫穎莎(中国) −6、9、8、−3、6 張本美和(日本)
目の前にいるのが、あの憎らしいほどに強い孫穎莎とは別人のように見えた。それだけ彼女が、15歳の張本美和が強かったのか。ラリー戦では互角以上に世界女王と打ち合い、敗戦の瀬戸際まで追い詰めた。
今月10日まで中国で行われた混合団体ワールドカップの疲れもあるのか、やや動きが重く見えた孫穎莎に対し、張本は出足から快調そのもの。バックハンドの緩急、そして自在なコースの打ち分けで11ー6とゲームを先取する。
バック対バックで圧倒的な強さを誇り、そこからフォアのパワードライブに結びつける孫穎莎。しかし、張本は懐の深いバックハンドで孫穎莎のバックの強攻もうまくさばき、緩急をつけてからストレートに飛ばす。ミドルを突かれても打球点を落とさず、コンパクトなスイングのフォアドライブで対応した。
ゲームカウント1ー2で迎えた4ゲーム目、中盤で一気に孫穎莎を突き放したプレーは、その実力が完全に世界のトップにあることを強く印象づけた。惜しまれるのは3ゲーム目。6ー1、8ー4のリードから7点連取を喫し、惜しくも逆転を許した。このゲームを取っていれば、3ー1で一気に勝負を決めていたかもしれない。
ゲームカウント2ー2の最終ゲームも、張本が3ー0とリードして孫穎莎に「守り」のタイムアウトを取らせたが、ここから孫穎莎が4ー3と逆転し、さらに8ー4と突き放した。一気にギアを入れ、フォアクロスの打ち合いで張本をねじ伏せたプレーに世界女王の意地を見た。
「成長は見せられたし、中国選手には近づいていると思いますが、チャンスがあった試合なので悔しい気持ちのほうが大きい。今日は悔しさが6割、手応えが4割。最終ゲームの3ー0のタイムアウトから、相手のボールの質が高くなった」。試合後のミックスゾーンで語った張本の表情には、悔しさを滲ませながらも爽やかな充実感があった
今日の一戦で中国は、改めて張本美和を主要なライバルとして「ロックオン」しただろう。久々に日本で行われた国際大会で、これほどハイレベルな試合が連続で見られるとは……。紆余曲折を経て開催を迎えた大会だが、この2試合だけでも開催した価値があったと思えるほどだ。それにしても惜しい内容だった。
ツイート