卓球王国 2024年4月22日 発売
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「相手との勝負でもあるし、 自分との勝負でもある」女王の言葉vol.3

世界選手権はシングルスと

ミックスで最高のプレーをして

メダルを目指します

 

優勝会見で、こういう質問が飛んだ。

「一般の人から見ると、なぜ世界ランキング4位の石川選手がこんなに全日本で苦しむのか、と見えてしまう。なぜですか」。

確かにそうだろう。しかし、それが全日本という大会の重さであり、怖さなのだ。「全日本はそれだけプレッシャーもかかるし、緊張する。私たち卓球選手はみんな全日本での優勝を目標にしている。簡単には勝てないのが全日本ですね。みんなのレベルも上がっていて、仲間としてライバルとして競争したことで私も世界ランキングを上げることができた」と石川は答えた。

まさに、この「全日本」という大会が石川選手を成長させ、自信と屈辱を与えてきた。一方、五輪や世界という舞台で修羅場をくぐり、実力を備えた石川は「全日本」という舞台に戻ってくる。

●−−以前、全日本選手権という大会は最後の締めではなく、1年のスタートなんだと言っていましたが、去年の優勝からの1年間を振り返ると、どういう1年だったのでしょう。

石川 去年の全日本で優勝できて、世界選手権、アジア競技大会、そしてワールドツアーのロシアオープンとグランドファイナルでの優勝といろいろありました。絶対に負けられないというところを何とか乗り越えた。そういう試合を何回も経験させてもらったことで、ひと回り大きくなったし、自信がつきました。技術的にはバックハンドのコースや変化、サービスからの3球目も前より良くなった。プラボールに変わって以降もだんだん対応できているし、やりにくさはない。

この1年間、基本を相当にやったし、それをやりながら試合で勝つための練習もやってきた。フィジカル(身体)的には男子の合宿に入れさせていただいて一緒にトレーニングさせてもらったりして強くなったと思います。

 

●−−大会前は、石川さんと福原さんによる一騎打ちの決勝というのが大方の予想でした。この半年間を見ても、二人の調子は良かった。もし対戦したら世界的なレベルの試合を期待していました。大会直前に福原さんの棄権を聞いた時にはどうでした?

石川 もちろん決勝で当たる確率は高いと思っていたし、ロシアオープンでもグランドファイナルでも対戦しているので準備はしてました。(棄権を聞いた時は)びっくりしました。正直残念でした。私は試合をしたかった。

 

●−−石川さんは若いということもあるけど、体のほうは問題ないですか。

石川 やっぱり自分の力を出せるようにするためにも、ケガの予防のためにもトレーニングをしなくてはいけない。今ケガをしないのはトレーニングのおかげ。練習の負荷も大きくなっていくので、体を強くすることを含めてトレーニングは必要です。

 

●−−去年のインタビューの時には自分がミスした時の態度や表情を修正したいと言っていたけど、最近選手としての風格が出てきましたね。

石川 去年1年の自信かなと思います。良い成績を積み重ねることができて、それが自信になっているのかなと。

 

●−−去年の世界選手権と今回の全日本、どちらが重かったのでしょう。今回は相当に重そうでしたね。

石川 世界選手権は重いですけど、まず世界選手権と全日本選手権のレベルも違うし、世界選手権が終わって半年で自分のレベルも上がっています。世界選手権も絶対負けられないという気持ちでやっているけど、全日本はまた別の重さがあります。(9年連続決勝へ進む)水谷君のすごさを改めて感じました。尊敬します。

 

●−−国内でガチンコでやる試合もあまりないけど、 全日本選手権をこれだけやってきて、その全日本を通して成長して強くなっていく自分がいますか?

石川 それはすごくあると思います。自分は強い選手に勝つことが自信になりますが、自分と同じか少し下の選手に勝つことはすごく難しいことで、そこで勝っていくことで大きな自信になりました。

 

●−−その自信が世界や五輪という舞台で戦う時にプラスになるということですね。

石川 それは生きてきますね。今回思ったのは、中国選手が世界という舞台でどれだけ外国選手から向かってこられるのか、どれだけプレッシャーを感じているのか。そういうことが少しわかった気がしました。

 

●−−1年後の全日本も3つ狙いますか?

石川 その質問は「なし」でお願いします(笑)。いや、実際は苦しくて……打ち込まれ続ける感じですから。

 

●−−1月発表の世界ランキングで4位になりました。

石川 うれしいですね。グランドファイナルで優勝できたから4位になれたのかなと思います。4位になれたからもっともっと上を目指したい。 世界選手権はシングルスとミックスで最高のプレーをしてメダルを目指します。そしてリオ五輪や東京五輪を目指して頑張りたいですね。

 

●−−もうリオ五輪が来年に迫ってます。

石川 もう1年前から私の気持ちはリオですから(笑)。

世界を目指す日本のトップ選手にとっても「全日本」は通過点ではない。多くのマスコミや何百万人という卓球ファンが注目する特別の舞台なのだ。石川佳純は世界での自信を武器に、しっかりと立ち止まり、無敗の女王として全日本を終えた。

さあ、次の勝負の舞台は中国の蘇州だ。そして、その向こう側にはリオデジャネイロが待っている。

(文中敬称略)

表彰台で涙を流す石川。苦しい闘いと重圧から解放された瞬間だった

 

石川佳純●いしかわ・かすみ

1993年2月23日生まれ、山口県出身。四天王寺高卒、全農所属。13歳の時に全日本選手権でベスト4入り、平成22年度全日本選手権で初優勝。平成25年度・26年度の同大会で2連覇して、通算3度目の優勝を果たし、26年度は女子では54年ぶりの三冠王となった。09年世界選手権ではシングルスベスト8、12年ロンドン五輪では団体銀メダルを獲得し、シングルスでも日本人初の準決勝進出を果たした。2014年ITTFワールドツアー・グランドファイナル優勝。世界ランキング4位(15年2月現在)

 

表彰式後の優勝記者会見で「カスミスマイル」を見せた

 

 

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