卓球王国 2024年11月21日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
インタビュー

「ラージはメンタルが7割」全日本ラージ3連覇・池田亘通に聞く、負けない理由と卓球フリーランスの仕事論

【練習は「100球でも、200球でも、300球でも打ち込むつもりで」】

---ラージの練習って、ゲーム練習ばっかりっていう人が多いけど、池田くんもそういうタイプ?

池田:ぼくはフットワーク練習なんかが8、9割ですね。基本練習が中心です。ラージって勝敗を分けるのは本当に1球、2球の差だなと思っていて。硬式みたいにスピードや回転が出ないし、2ゲーム先取なので1球でも多く返すことが大事。試合で最後に1球ねじ込むために100球でも、200球でも、300球でも打ち込むつもりで練習します。コスパは悪いと思いますね(笑)。

 

---でも、他の選手と比べて池田くんは圧倒的にミスが少ないよね。

池田:過去3回出場していて、大会の雰囲気もわかるし、試合の中で起こり得るアクシデントも想定できるし、気持ちの面でもぼくが一番準備の仕方をわかっているのかなと思います。正直、技術的にぼくより優れている選手ってたくさんいるんですよ。でも、技術を試合本番で出すための準備の仕方については、ぼくが一番なんじゃないかなと思ってます。

 

---個人的な印象だと、今年は今までの2大会よりも他を圧倒してるように見えたんだけど、実際はどうだった?

池田:たまたまですけど、単純に調子が良かったですね。でも、今までで一番緊張してました。ラバーの開発に携わったこともありますし、前回は家族もいなかったのが、今は妻も子どももいるっていう変化もあって。自分を信じてティバーさんがラバーを監修させてくれたのに、もし「予選リーグで負けた」ってなったら、ちょっとシャレにならないなとは思っていました。練習も家族との時間を削ってやっているわけだし、過去最高に緊張したけど、過去最高に準備して臨みました。「これだけやって負けたなら仕方がない」っていうくらいの。

 

---勝てなかったら、それがラバーの評価にもなるわけだもんね。

池田:そうなんですよ。何度も何度も細かくフィードバックを繰り返して、メーカーの方、工場の方にも迷惑をかけながら、自分で妥協なく開発したラバーなので信頼感はあります。ラバーを絶対に信頼しているからこそ、コケたらちょっと笑えないなっていう感じでした。結局、それが覚悟につながったのかなとも思います。

 

---何人かの選手と「どうやったら池田くんに勝てるんだろう?」っていう話をしてたんだけど、まったくミスしないから「体力勝負」とか「死ぬ気で粘る」とか、そんな話にしかなんなくて(笑)。今大会も初戦から徹底して確実に、確実にっていう感じのプレーを貫いているように見えたけど。

池田:現状、ラージ界ではぼくが一番穴のない選手なのかなとは思っています。カットに対してもそうだし、左(利き)に対してもそうだし、変則的なタイプとやっても、真っ向勝負の打ち合いでも「イヤだな」って思う場面がない。

 技術単体で見たら、ぼくよりも優れたものを持っている選手はいるけど、それだけじゃ勝てないと思っていて。2ゲーム先取で独特の緊張感もある中で勝つのは、自分の武器を押し出す選手じゃなく、プレー全体の穴が少ない選手。そういう考えでやっています。

 

---負けないのは、そういうロジックがあるからなんだ。

池田:今回は全部2-0で勝ったんですけど、圧倒して勝ったとは微塵も思っていなくて。「さすがだね」って言われますけど、本当にいっぱいいっぱいなんですよ。毎年言ってるんですけど、優勝した後は「もう出たくない!」って(笑)。

 

---じゃあ、全日本ラージが終わってからはラージのラケットはしばらく握らない?

池田:仕事で握ることはあっても、練習はまた1年後ですね。

今年の全日本ラージでは1ゲームも落とすことなく優勝

関連する記事