卓球王国 2024年4月22日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
全日本選手権2021

伊藤条太「35歳で初出場の岩城、初めて尽くしの全日本は終わった」

●男子シングルス2回戦
松島輝空(JOCエリートアカデミー) 4、7、4 岩城禎(緑の館)

松島に隙はなかった。ミスのない確実な卓球を目指す岩城は3ゲームを通してレシーブミスは2本のみ、松島の猛攻に対しても随所で得意のブロックで対応したが、速さと確実性に勝る将来の日本のエースは崩れなかった。

堅いバックブロックを見せた岩城

ここ2、3日、岩城のエキセントリックなプロフィールがメディアで話題になったためか、通常の2回戦では有名選手である松島にのみ向けられるはずのテレビカメラが、この試合に限っては岩城にも向けられた。午前中にジュニア男子の準々決勝で負けてショックを受けたばかりの松島にしてみれば、降って湧いたような面倒な相手に巻き込まれたと思ってもおかしくない状況だったが、冷静に岩城を攻略したのはさすがだった。

岩城のブロック、独特のリズムにも松島は全く動じず

試合後は、岩城の記者会見が行われた。記者会見とは、通常は有名選手に対して行われるものだが、岩城には複数の全国紙から取材要請があり、会見の運びとなった。「初めての出場という特別な状況だったが、楽しむしかないという気持ちで臨んだ。自分が努力の人で松島選手が天才と言われがちだが、松島選手は自分より努力しているから強いのだと思っている」と岩城らしい冷静なコメント。

松島の卓球について聞かれると
「普段、ピッチの速い練習相手はいるけど、松島選手はピッチが速い上にミスをしてくれないので、自分が点を取ろうとリスクを犯して悪循環になった」
「松島選手の若いところが隙になるかと思って臨んだが、まったくそういう隙がなく、むしろ松島選手の方が年上のように落ち着いていた」
と語った。

「松島選手のほうが落ち着いていた」と岩城に言わしめた松島。22歳の年の差を感じさせず

メディアで話題となった、弁護士への道や市役所の職を捨てて卓球に集中していることも聞かれ、「どこからそのモチベーションが来るのか?」との質問に対しては
「今まではチームメイトの応援などで見るだけの全日本だったが、いつか自分が出る大会にしたいと思ってやってきた」
「球が遅いというコンプレックスを抱えてやってきたが、卓球はボールが遅くても戦術やメンタル面で勝てるのが面白い」
「出場するという目標は達成できたので、来年以降は出るだけではなく1回でも勝つことを目標にしてやっていきたい」
と語った。

全日本への出場も初めてなら、ピンクのフロアマットを敷いたコートでの試合も、テレビカメラに囲まれての試合も、記者会見も初めてだ。
初めて尽くしの岩城の全日本は終わった(伊藤条太)。

関連する記事