山梨・緑が丘スポーツ公園体育館で開催されていた第55回全日本社会人卓球選手権は大会最終日を迎え、男女シングルスの準々決勝〜決勝が進行。男子シングルスは上田仁、女子シングルスは長崎美柚が優勝を果たした。まず男子シングルス準々決勝〜決勝の結果は下記のとおり。
〈男子シングルス〉●準々決勝
英田理志(愛媛県競対) 9、−6、11、8、−8、8 松山祐季(協和キリン)
大島祐哉(木下グループ) 7、4、4、8 笠原弘光(シチズン時計)
郡山北斗(リコー) −6、8、−7、8、9、9 町飛鳥(ファースト)
上田仁(T.T彩たま) −9、10、5、−8、7、6 小西海偉(東京アート)
●準決勝
上田仁 −9、10、5、−8、7、6 郡山北斗
大島祐哉 5、−10、−14、7、7、1 英田理志
●決勝
上田仁 7、−11、9、4、9 大島祐哉
上田は準々決勝で小西(旧姓:吉田)の揺さぶりと後陣での粘り、準決勝で左腕・郡山の中陣カウンターに苦しみながらも、ともに4−2で制して決勝進出。重いパワードライブを武器に準決勝で英田のカットを攻略した大島と激突した。右シェークドライブ型の本格派同士、台上のストップ対ストップや早いタイミングのツッツキから、お互いに質の高い両ハンドドライブを打ち合う、まさにワールドクラスの一戦だった。無観客開催だったのが惜しまれる。
2015〜2017年大会で男子では史上初の3連覇を達成した後、2018・19年大会を欠場した上田(昨年は開催されず)。変則ながら4連覇がかかる決勝だったが、「どちらかというとぼくのほうが向かっていけたかなと思います。大島のサービスをうまくレシーブできたし、あとは思い切っていくところ、つないで我慢するところ、そのメリハリが大会を通じて良かったので、それが決勝で現れましたね」とコメント。「公式戦で一度も勝ったことがなかった」というベスト8決定戦の松平賢二戦を乗り切り、尻上がりに調子を上げた。
「プロになって初めて出る全日本社会人で、練習も積めていた。Tリーグで思うように結果が出せない中、自信を失いかけていたんですけど、やってきたことが間違いではなかったと証明できる試合になりました。自信にもなりましたし、今までの優勝とはひと味違った優勝だったと思います。
今はTリーグ一本でやっているので、何とかしてチームの力になりたいし、今後の目標としては全日本ですね。プレースタイルを変えたり、年を重ねてからできるプレーを自分で模索しながらやっている。それを全日本という大きな舞台で発揮できればいいですね」(上田)
3位の英田と郡山も健闘が光った。英田はこれが全国大会で初の表彰台。5回戦でチームメイトの神巧也を破り、その神が準々決勝・準決勝ではベンチコーチとして英田を支えた。準決勝の大島戦については、「カットは予想以上に引けたけど、大島さんのボールはバウンドしてからすごく伸びてくる。回転量がすごくてカウンターにミスが出てしまった。1ゲーム目の出足で一気にリードされて、そこの集中力の差が最後に出た」とコメントした。準々決勝で町(ファースト)を破った郡山は、ストレートへの両ハンドカウンターが炸裂。「フットワーク練習をしっかりやりこんできた」という言葉のとおり、動きの良さが光った。
〈女子シングルス〉●準々決勝
野村萌(デンソー) −7、5、−9、8、9、6 成本綾海(中国電力)
橋本帆乃香(ミキハウス) 6、5、5、3 宋恵佳(中国電力)
長崎美柚(日本生命) 6、3、4、2 高橋梓海(エクセディ)
鈴木李茄(昭和電工マテリアルズ) −7、7、−8、9、7、4 前瀧初音(愛媛銀行)
●準決勝
橋本帆乃香 7、5、−7、3、6 野村萌
長崎美柚 6、7、11、5 鈴木李茄
●決勝
長崎美柚 5、10、9、9 橋本帆乃香
一方、女子シングルス決勝も長崎美柚と橋本帆乃香という、国際大会で実績を残したふたりの対戦。各ゲームとも橋本が中盤でリードする場面が多かったが、長崎は変化の大きい橋本のバックカットを避け、フォアとミドルにうまくボールを集めた。大会前はチームの先輩である平野美宇が育った、地元の平野卓研で調整したという長崎。「練習パートナーの方やトレーナーの方もいて、自分が試合に向けて集中できる環境作りをしてもらった」と語るとおり、最後までパワードライブを迷いなく打ち切った。
終わってみれば、長崎は5回戦の山本(十六銀行)戦、1ゲーム目を10−12で落としたのみ。世界ジュニア女王として、社会人1年目ながら無双の強さを見せつけた。「優勝したいという気持ちはあったんですけど、アジア選手権が終わって日本に帰ってきて、アジア選手権では「もうちょっと頑張れたな」という反省があったので、社会人では焦らず自分のペースで、自分の卓球を取り戻せるように調整してきました。それが結果につながって良かったです」とコメントした。
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