現在は木下グループと契約し、木下マイスター東京と木下アビエル神奈川のホームゲームでDJを担当しているケチャップさん。ご自身はもともと高校球児だったが、「弱小の県立高校で、全然野球エリートじゃないんです」と言う。「だからこういう仕事をしていて偉いという感情もないし、人と人をたくさんつなげてあげたい」(ケチャップさん)。
会場で印象的なのは、小さな子どもに話しかけている姿だ。話しかけられた少年、少女は最初はちょっとビクビクしているけれど、自分の好きな選手を聞かれてその選手に手を振ってもらったり、自分の名前を大きな声でアナウンスしてもらったり、最後はきっと笑顔になる。
−ケチャップさんは、子どもたちに会場でよく声をかけていますよね。シャイな卓球少年、卓球少女にトップ選手と触れ合う場を作ってあげていて、いいなあと思います。
DJ:ぼくね、息子が5歳の時、ふたりでサンフランシスコに旅行に行ったことがあるんです。メジャーリーグはシーズンオフだったんですけど、サンフランシスコ・ジャイアンツのグッズショップに帽子を買いに行ったんですよ。そこでショップの店員さんに「お前も野球やってるのか?」って聞かれたんで、やってると答えたら「イエース!!」ってね。
その時、その店員さんに「お前の息子に伝えてくれ」ってこう言われたんです。「将来は野球をいっぱい楽しんで、この街の人を喜ばせてくれ」って。つまりうちのチーム、サンフランシスコ・ジャイアンツでプレーするような選手になってくれってことなんですよね。息子はもう19歳になりますけど、今年のポストシーズンまでずっとジャイアンツを応援してますよ。
息子も都立高校の弱小野球部でしたけど、5歳の時のグッズショップの店員さんのひと言がきっかけで、ずっと夢がふくらんで頑張れた。ぼくら大人のひと言でそのスポーツを頑張ることができたり、そのスポーツを好きでいようと思えることもある。サンフランシスコでの体験でそれに気付かされたんです。だから野球の会場で会う子どもには、「将来キミの名前をスタジアムで呼ぶからな」とか、Tリーグの会場でも名前を聞いて「将来会場でキミの名前を呼ぶからな」って言うんです。それもぼくら大人ができる、夢を生むひとつの方法じゃないかと思うんです。
スポーツのトップ選手と子どもの頃に会った経験って、ずっと覚えてますよね。子どもたちにとっては、一生忘れられない経験じゃないですか。「子どもの頃に親とTリーグ見たなあ」とか、「大田区総合体育館で親と一緒に見たあの選手、どうなってるのかなあ」とか。そう思ってもらえるところから始めればいい。ぼくは会場では、一生忘れられない一瞬を作ろうと思って頑張っています。本当にそう思っているんですよ。
−水谷(隼)選手や張本(智和)選手に手を振ってもらった子どもたちは、恥ずかしそうだけど本当にうれしそうな顔をしますよね。周りもあたたかくそれを見守っている。
DJ:Tリーグの会場のお客さんに、「次世代の子どもたちが見に来ています」「いつかこの子たちがこのフィールドで、プレーできる雰囲気を作ってあげましょうよ」というと、みんなすごく拍手してくれるんですよね。だから卓球はすごく可能性がある。その会場の雰囲気というのは、自分でもすごくうれしいです。
スポーツって「憧れの継承」じゃないですかね。「ああいうふうになりたい」という憧れを持って選手が育って、その姿を見てまた下の世代が憧れを持って育っていく。今まではTリーグがなかったから、強い選手がいてもヒーロー化、ヒロイン化されていなかったけど、今は憧れを持ちやすくなっていると思います。
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