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フランスの双星、ルブラン兄弟に直撃インタビュー「チーム・ルブランは日本がモデルだ」

 

「メガネ兄弟」は個性的。
「彼らはフッとメガネを外して、台の上に
置くんだ。それは彼らが冷静になる合図なんだ」

ヨーロッパの若手で、スウェーデンのモーレゴード(2021年世界選手権準優勝)に次ぐ期待の星はフランスのアレクシス・ルブラン(19歳)とフェリックス・ルブラン(16歳)の兄弟だ。
二人は世界選手権成都大会でもフランスのベスト8進出の原動力となり、アレクシスはWTTコンテンダーで張本智和を破り、世界ランキングを28位まで上げている。
弟のフェリックスは世界ユース選手権でもU19のシングルスで3位に入賞した。世界選手権の団体では、ヨーロッパチャンピオンのチウ・ダン(ドイツ)を破っている。世界ランキングは79位だが、地元パリ五輪の代表候補になっている。
二人はフランス南部の出身地のクラブである2部リーグの「モンペリエ」でプレーしている。通常はフランスの有望選手はパリ郊外のナショナルトレーニングセンター「INSEP」(インセップ)に入って、集合訓練をするのが常だったが、この兄弟はモンペリエに残ることを選択し、協会も理解を示した。

カルデラノ(ブラジル)のコーチでありながら、フランスのナショナルチームのコンサルタントを務めているジャンロネ・モウニー(フランス)コーチは二人を説明した。
「兄弟の父のステファンもフランス代表選手だった。INSEPでの集合訓練では『自分が何の練習をしているのか』という意識を失いがちになる。だからこの兄弟は『モンペリエ』に残って練習することを選んだし、それが合っていた。その中でユニークなプレースタイルを作り、特にフェリックスはペンホルダー攻撃という独自の卓球を作り上げた。
INSEPでの集合訓練でもなく、フランスリーグに追われることもなく、じっくりとWTTなどの試合に集中できている。『チーム・ルブラン』はまるで日本のトップ選手のようにチームで動く。これから面白くなるね」
卓球家族の「ルブラン一家」。父のステファンは元フランス代表で、ステファンの奥さんは元五輪代表、ヨーロッパ団体チャンピオンのクリストフ・レグーの双子の妹だ。

 

兄のアレクシス・ルブラン、19歳

 

16歳ながら世界ユースで3位に入ったフェリックス・ルブランは欧州では極めて珍しいペンホルダー選手として注目を浴びている

フェリックス「4歳から中国コーチのマネをして
ペンホルダーを使った。一度も変えてないよ」

モウニー氏は同時に「Tリーグでの日本選手は強い。ところが、WTTなどの国際大会に行った時に、日本で見る強さを発揮できない」
それは日本選手は同じようなプレースタイル、打法に偏っているので、国内では慣れているが、海外の試合でいろいろなスタイルの選手と対戦した時に順応性に欠けるという意味か?と問うと、「それはあると思う。ヨーロッパでは日本のように幼少期から練習をやり込む選手はいない。早い時期に遊びとして卓球を始めても、本格的に練習を始めるのは早くはない。それぞれは一長一短はあるが、ヨーロッパではフェリックスのようにユニークな選手も出てくるし、様々な試合を通して順応性は磨かれる。
松島輝空のように驚くような才能はあるのに、日本ではチャンスに恵まれない。そういう選手はヨーロッパに飛び出すべきだ」(モウニー)

ルブラン兄弟の話に戻ろう。
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●ーふたりともこの1、2年間ですごく力をつけている。その理由は自分でわかるかな。
アレクシス 新型コロナの感染拡大で、試合もない時に、ぼくらは兄弟でよく練習をしていた。本当にたくさんしたし、同時にどのようにこれからやっていくのか、そして「チーム・ルブラン」を作ろうとした。コロナの後、ノーマルな生活に戻って、その頃から、コーチやフィジカルコーチ、試合分析をする人、そして父と一緒にチームが作られ、より卓球に集中するようになった。それが強くなった理由だし、試合での自信もついている。
コロナの時期に、ひとつのことではなく、台上技術や台から離れての打ち合い、サービス、レシーブといろいろな技術を習得したし、戦術的なことも習得。同時に「チーム・ルブラン」として環境を作っていった。
●ー フェリックスに質問だけど、君はヨーロッパ選手としてとてもユニークなペンホルダーのプレースタイルだね。君はアレクシスと同じ卓球スタイルをしなかったんだね。
フェリックス 4歳からペンホルダーに替えたけど、フランスでプレーしていた、陳剣という人が「モンペリエ」でコーチとしていた。ぼくは彼の卓球が好きだったので、彼の卓球を真似するようになったんだ。
●ー 今までシェークハンドに変えることはなかった?
フェリックス 一度もないよ。 (卓球王国より抜粋)
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「メガネ兄弟」と呼ばれるほどに、最近の選手では珍しくメガネをかけているのも、ひとつの個性として表現されている。前述のモウニー氏は、「メガネは実は彼らのメンタルをコントロールする道具のような働きをする」と言った。どういう意味なのだろう。
「ゲームが煮詰まった時、興奮しすぎてメンタルが崩れそうな時に、彼らはフッとメガネを外して、台の上に置くんだ。それは彼らが冷静になる合図なんだ」(モウニー)。
8月には契約メーカーをバタフライ(タマス)からティバーに変えた。兄弟のおじさんのレグーがバタフライの代理店をやっている関係で、メーカーは変わらないと思っていたが、「契約可能性あり」という情報を受けて、翌日にティバーのローランド・ベルグ社長が交渉に駆けつけ、個人契約というよりも「チーム・レブラン」のサポートする契約にしたという話を聞いた。
有望なヨーロッパの若手を巡って、メーカーのトップがすばやく動いたことで、ルブラン家に誠意を見せた形となった。

その昔、世界の卓球界を震撼させた個性的なフランス選手がいた。ジャン-フィリップ・ガシアンだ。1993年世界チャンピオンで、100mを11秒台で駆け抜けるほどの俊足で、前陣でのライジングのフォアドライブ連打で世界の頂点に立った。「彼はカリスマだよ。彼のように世界チャンピオンになるのが夢なんだ」(アレクシス・ルブラン)。
奇しくも2024年パリ五輪組織委員会の組織委員会の執行役員として重責を担っているのがガシアンだ。ガシアンの前でレブラン兄弟が勇姿を見せる日が近づいている。
(インタビュー全文は卓球王国2月号・12月21日発売号)

1993年世界チャンピオン、ジャン-フィリップ・ガシアン

 

地元フランスでの2024年五輪を狙うルブラン兄弟

 

 

ルブラン兄弟のインタビューが掲載される2月号は12月21日発売

 

 

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