今大会、ジュニア男女に3人揃って出場し、快進撃を続けているのが伊藤家の「3きょうだい」だ。
長女の百華は、威力と安定性を兼ね備えたバックハンドが武器。昨日の1回戦にゲームオールで勝利し、試合後は「初戦で少し緊張しました。内容は満足できる感じではなかったですけど、まず勝てたことが良かったと思います」と安堵のコメント。さらに今日の2回戦では、ゲームカウント0−2から鮮やかな逆転勝利で3回戦進出。目標だというランク入りを目指す。
次女の七海は19年全日本カデット(14歳以下)ベスト8の実力者。前陣をキープし、正確なバックハンドでラリー戦を制するサウスポー。スコアが競り合っても慌てず、騒がず、着実に得点を重ねる。初戦は確実にストレート勝ちを収め、「久しぶりの大会でしたが、練習どおり試合を楽しむことができました」と語る強心臓ぶり。「一戦一戦大事にしてランクに入りたい」と意気込む。
そして一番下の弟、19年全日本カブ3位の佑太はこちらもサウスポー。小学5年生での全日本ジュニア出場に父・和真さんも「高校生相手によく頑張ったなと思います」と語る。大会初日のジュニア男子1回戦で、中学生相手にストレート勝ちを収め、「1回勝ててうれしいです。明日も勝てるように頑張りたい。目標は3日目まで残ることです」(佑太)。コメントは初々しいが、大舞台にも臆することなく、相手がよく見えていた。
父・和真さんは香川・善通寺駐屯地に勤務する自衛官。3人の子どもを全日本の舞台に送り出すという、世の「卓球パパ」「卓球ママ」がうらやむような結果だが、その秘訣を少しだけ聞いてみた。
「卓球の練習をするため、子どもたちには時間の管理を自分で決めさせて実行させています。『学校から家に帰る→宿題→サービス練習→トレーニング→○○→食事→練習』というのが毎日のサイクルで、○○が自分の時間。このサイクルの時間配分や管理をさせています。
週1でこのサイクルを崩していい日を設けているので、自分で学校が早い日を休みにして、遊びに行ったりしています。かつてはスパルタで厳しい指導もしていましたが、それをやめてから子どもたちは結果を残すようになりましたね」
「子どもに自分の夢を背負わせて、という声も聞きますが、私は逆に『自分の子どもに夢を持って何が悪いのか』と思っています。チームメイトの親御さんにも、自分の子どもに夢を持ってくださいと話しています」(和真さん)
子どもに夢を持つということは、子どもの可能性を心から信じられるということ。子どもを持つ親にとっては、これがなかなか難しい。和真さんもまた、「いつ勝てなくなるかわからない不安と戦っています」という。それでもこの全日本で積み重ねた1点、1ゲーム、そして1勝がきっと明日への原動力になる。「自分の子どもに夢を持って、何が悪い」。子どもたちの可能性に懸ける父親の言葉は、清々しく胸に響いた。
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