【エッセイ=西村友紀子】
ホカバを目指す卓球キッズの親御さんのことを、私は卓球母(たっきゅうぼ)と呼んでいます。卓球母は一般のママとは似て非なる感覚を持つ生き物。そのぶっ飛んだ行動を卓球母のひとりである私の体験を通してご紹介します。
私は高校生スタートの卓球レディース。学生時代、小学生スタートのライバルに勝てなかった悔しさから、我が子が小学生になると卓球教室へ週に3回以上も通わせることに。そんなある日、低学年の息子が何もないところで派手に転倒するのを見て、思わず私もズッコケました。
練習中のひとコマ。相手のサーブをとろうと構えていた息子が、ラケットを振った瞬間にステーンと転んだのです。息子はすぐに立ち上がり、次のサーブをとろうと構えたのですが、ツッツキしたボールをスマッシュされると、そのボールを追いかけようとして再び転倒。それを見たコーチが「おーい、卓球は転んで点が取れるスポーツじゃないゾー」と、うちの子を叱咤。
えっ? 息子は転んだお情けで点がもらえるとでも思ってるの? 前から練習中に「よく転ぶなぁ~」と気にしてたけど、なんで何だろう。練習後にコーチにたずねてみると……。
コーチ「おそらく下半身がまだ安定していないから、上半身の振りに負けて転ぶんでしょうね」とのこと。
なるほど。いや薄っすら気づいてたんですよ。小学生強者の黄金の法則を。卓球がうまい子どもは下半身がどっしりとしてる。どんなに振られても崩れない、強いボールが打てる子はみんな洋ナシ体型だって。
それに比べて我が子の脚はカタクチ鰯2本。どうやったら脂ののった真鰯に育つのか。悩んでいると、知り合いの卓球母に「下半身の強化にはバランスボールがいいよ」とすすめられました。たしかに、座るだけで体幹が鍛えられるなんて超便利。私は早速バランスボールを購入。そして、ご飯を食べるとき、テレビを観るときは、イスの代わりにバランスボールに座るよう子どもに命じました。初めてのバランスボールに大はしゃぎの息子は「何これー! おもしろい!」と打ち上げ花火のように満面の笑みを浮かべてボールをゆらします。私も「毎日続きそうでよかった」とホッと胸をなでおろしたのですが、3日後にはバランスボールへの興味が線香花火のように消え入り……。
おおーい、三日坊主の坊主はうちの子の前前前世がモデルだったんじゃないの???
筋肉へのアプローチをあっさりとあきらめた私は子どもを太らせることにしました。いつもより多く白米を炊いて、いつもより多く肉を買って、ご飯×ラーメンといったW炭水化物上等。晩御飯の時間は良い子が床に就く練習終わりの9時。ダイニングテーブルの上は、野菜が際立つ緑の草原ではなく、衣が席巻する台地のように、土色の揚げ物をずらりと並べて。
そんな新人力士のような食生活をさせてから数週間後。体重計はアナログからデジタルへ新調しました。我が子の体重管理は母親の責任ですもの。これで子どもの体脂肪率まで見える化してやるのです。はっ、はっ、は。
私はここまでの努力を試すために、さっそく子どもを体重計にのせました。すると、なぜか1キロ減。。。。。
むむむ、アナログとデジタルでは誤差があるのか??? 私は自ら体重計にのって確認することに。すると、なぜか……4キロ増。。。。
( ゚Д゚)( ゚Д゚)( ゚Д゚)MITOMETAKUNAIKEDOSEIKAKU
4キロの重みが両肩にのって顔も上げられない私。息子は無邪気な笑顔で「お母さん、体脂肪率は? 教えてよ」と、母の測定結果を知りたがります。
待て、子どもに頼まれたからと言って安易に数字を出すな、はやまるな、考えるのだ自分。
私が3ヵ月後に見たいのは、重い3球目を決める息子の姿か、それとも厚い3段腹に悩む自分の姿か……。
やめた。わが子の下半身改造計画はナシとします。
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