日本卓球協会に勤務し、強化と普及を担当している江尻雄一さん。今大会は東洋大卓球部監督という“もうひとつの顔”として大阪入りし、5名の選手のベンチに入っている。
180センチを越える大柄な体格の江尻さんがベンチに座ると迫力満点。女子シングルス1回戦で奥山史穏選手のベンチに入ったが、残念ながら初戦を突破することができなかった。
試合後に奥山選手に監督のイメージを聞くと「普段の練習ではすごく厳しいですね。でも、今の試合もそうでしたが、ベンチでは優しくなるんです。私が弱くて負けてしまって……。監督にも申し訳ないです」と言うと、「いや、俺は普段から優しいだろ?」と監督。奥山選手は、「(優しいのは)ベンチの時だけです(笑)」と笑顔で言い返した。
初戦を突破することはできなかったが、バランスのいい両ハンド攻撃を見せた奥山選手
東洋大卓球部を卒業した江尻さんは、その後に日本リーグに所属する実業団でプレーしたのちに日本卓球協会に入った。母校である東洋大卓球部の監督を務めて15年。一昨年は女子がインカレで2位になるなど、同大学の活躍が目立つ。
「新型コロナになってから大学も厳しくなり、学生だけでは練習することできません。平日でも必ずコーチか監督の帯同が必要なので、私と4人のコーチでやりくりをして、仕事の後に大学に行って夜から練習しています。しばらくこの状態が続いているので練習量は減ってしまいましたが、学生たちはしっかりやってくれています」と江尻さん。
大柄でスキンヘッドの江尻さん。ベンチでの迫力は満点だがコートを離れるとにこにこ笑顔の持ち主だ
仕事後に行ける日は大学に行き、指導をする生活が長く続いているが、そうまでして監督を続けているのは、「自分の学生時代の罪滅ぼし」だと言う。
「私が大学4年の最後の関東学生リーグ戦で、ずっと2部だった東洋大(男子)を3部に落としてしまいました。2部を守ってきてくれた先輩たちに申し訳なくて。その思いがあって母校の監督をやらせてもらっています。女子はリーグ戦とインカレ優勝、男子も今は2部にいるのでもうひとつ上に上げたいですね」
日卓協と大学監督というふたつの顔を持つ江尻さんは、実は筆者の1学年上の先輩で今から35年前の中学時代からの仲。「ちゃんとうまく書いてよな」と肩をぽんぽんと叩かれたが、分厚い手はあの頃のままだった。
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