卓球王国 2022年8月22日 発売 vol.305
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全日本選手権2021

「関西に来て本当に良かった」。下山秋帆、道を開いた2年間

 本日の全試合が終了し、男女シングルスで勝ち残っているのは、明日から登場のスーパーシード勢を含めて男女各64名までに減った。そして敗れた選手にも、その数だけバックグラウンドがある。そんな中で「関西に来たことで、自分を変えることができた」というのが芦屋大4年の下山秋帆。芦屋大は今年度の関西学生リーグ、関西学生選手権には新型コロナウイルス感染のリスクを考慮し、大学から出場許可が降りなかったため不参加。下山にとっては、この全日本が大学生活ラストゲームとなった。

左ペンドライブ型の下山。裏面でのバックドライブは鋭くコースを突く

 

 下山の出身高校は山梨の日本航空高。1年時からインターハイに出場するなど、チームの主力として活躍した。2歳上の姉・夏音も同校出身で、2014年の山梨インターハイ女子ダブルスでは快刀乱麻の活躍を見せて3位に入賞。日本航空高に初の全国入賞をもたらしている。

 高校卒業後、地方の大学に進学して社会福祉を学んでいた下山だが、その中で「将来は指導者になりたい」と考え、スポーツの指導について学べる大学への編入を決意する。その編入先に選んだのが兵庫の芦屋大。3年時から編入することとなったが、関東で育った下山にとって、関西はまったく知り合いのいない土地だった。

 

 編入した芦屋大でも卓球部に所属したが、編入前の大学に比べると練習量は少なくなった。

 「いろいろ環境が変わった中でも、卓球を頑張りたい、強くなりたいと思っていました。だから、ひとりで練習している時もあったんですが、それを見た後輩たちが『練習、つき合いますよ!」と声をかけてくれるようになった。それは本当にうれしかったですね」(下山)

 大学で指導を学び、部活で練習する傍ら、将来のためにと大阪市内の卓球場でのコーチもスタート。しかし、大学卒業後は指導者に…と思う一方で「選手としての下山秋帆」を諦めきれない自分もいた。指導者を目指しながらも、「自分がどこまで強くなれるか、挑戦したい」という気持ちはだんだんと強くなっていた。そこで下山はあるチームに自ら連絡を取り、なんと加入を直談判。そのチームとは、現在、男子が日本リーグに所属しているクローバー歯科。今後、女子も日本リーグへの参戦を目指しており、下山は自らアクションを起こして採用をつかんだ。

 

 なんともめまぐるしい大学4年間を経て挑んだ今回の全日本は2回戦で終戦。それでも「大学生活最後の試合を全日本でできて良かった」と清々しく振り返った。見知らぬ土地での生活は、大変だったとも言うが、今は自分の選択は間違っていなかったと自信を持って言える。

 「関西の人って、ポジティブなんです。私が悩んでいても『大丈夫』って言ってくれる。それに引っ張られて、私もポジティブになれた。以前の私だったら、まったく知らないところに自分を売り込むなんてできなかったと思います。こっち(関西)に来ていなかったら、もっと強くなりたいとも思わなかったかもしれないし、卓球を辞めてしまって、将来後悔していたかもしれない。最初は大変でしたけど、関西に来て本当に良かったなと思います」(下山)

 「選手として強くなりたい気持ちがあるうちは、どこであっても頑張りたい」と語る下山。そんな気持ちで送る選手生活は、いつか指導者になった時にもきっと大きな財産になる。「卓球、大好きです」と言い切れる女子大生、素敵じゃないか。下山秋帆、22歳。まだまだ卓球に夢中だ。

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