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元五輪金メダリスト、張継科ラケットの出荷停止。中国で沸き起こった「ギャンブル騒動」で大炎上

 

2012年ロンドン五輪で金メダルを獲得した張継科(中央)。左は銀メダルの王皓(中国)、右は銅メダルのオフチャロフ(ドイツ)

 

タマス(バタフライ)の反応は早かった。
2011・2013年世界選手権チャンピオン、2012年ロンドン五輪金メダリストの張継科(チャン・ジィカ)のギャンブルと借金騒動、交際女性とのトラブルがSNSを中心に中国国内で拡散し、前代未聞のスキャンダルとして大炎上している。
その後、新聞では報道されないものの、その情報をもとにタマスは「張継科ラケット」の出荷停止を決めた。

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弊社アドバイザリースタッフの張継科選手に関する報道について
(中略)
現在、状況を確認中ではございますが、報道内容の性質を鑑みて、以下の対応を実施させていただくことをご報告いたします。
・弊社グループ会社のホームページより、本選手に関する選手情報および製商品情報の削除
・状況の確認ができるまでの間、弊社グループ会社より本選手の肖像を用いた製商品の出荷停止 (4月5日/タマスHPより)

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情報の真偽のほどはわからず、法廷闘争になる可能性もある。
張継科は2011年の世界選手権で初優勝。特にバックの台上ドライブ(当時はチキータと言っていた)を主軸にして、そこからの両ハンドのドライブ、カウンタードライブで世界の男子卓球の流れを変えた選手だ。
それまでは台上でのレシーブでは、ストップ、ツッツキ、フリックという受け身の技からラリーに入るのが定石だった。しかし、張継科は横回転を入れる変化重視の技術だったチキータを、強い上回転を加える「台上バックドライブ」とも言える技術に進化させ、レシーブから優位に立てるスタイルを確立した。さらに翌年のロンドン五輪で優勝すると、完全に男子の卓球はチキータ、台上ドライブからの攻撃卓球に変わり、その後、女子卓球にも影響を与えた。

しかし、張継科は当時から卓球以外でも話題が多かった。勝利の後にユニフォームを引きちぎるパフォーマンスを見せ、ユニフォームを脱いで背中に入れたタトゥーを披露し、2014年の男子ワールドカップでは優勝を決めた後にフェンスを蹴って破壊し、国際卓球連盟から賞金を全額没収されるなど、何かとお騒がせの選手だった。
私生活でも有名女優との交際や、ドイツやイタリアの高級車を複数台所有したり、歌手デビューするなどSNSのフォロワーも1200万人を超え。中国では単なるスポーツ選手、五輪金メダリストを超えるカリスマ的なスターだっただけに、今回の騒動はSNS上で大炎上した形だ。
2017年世界選手権デュッセルドルフ大会では、大会が始まってすぐに中国女子チームの孔令輝(2000年五輪金メダリスト)監督の「ギャンブル・借金騒動」が中国で報道され、本人が大会期間中に急きょ帰国した例もある。
張継科はすでに卓球選手として事実上引退しており、個人の問題として中国卓球協会も何らコメントをしておらず、新聞等でも取り扱われていない。彼が卓球界に残した栄光と足跡が変わることはないが、「張継科ファン」にとってはつらい状況だろう。

2011年世界選手権で横回転が入ったチキータではなく、台上バックドライブからのパワープレーで世界を制覇。その後の世界の卓球の流れを変えた

 

2011年世界選手権初優勝で喜びのあまり、ユニフォームを引きちぎる張継科

 

2014年男子ワールドカップ決勝直後にフェンスを蹴り上げ、ITTFと中国卓球協会から「おとがめ」を受けた張継科

 

 

 

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