卓球王国 2026年7月21日 発売
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「スポンサー撤退に反対」卓球王国の恩人とも言える北岡功さん、安らかに眠ってください

7月15日、日本卓球株式会社(ニッタク)の北岡功さんが逝去された。 聞けば、亡くなる前日も自宅そばの喫茶店で会社の幹部の方と打ち合わせをしていたという。しかし翌日、検査のために訪れた病院で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまった。

思い返せば30年前の1997年。卓球王国を創刊するにあたって、すべての卓球メーカーにご挨拶に伺い、スポンサーとしてのお声がけをさせていただいた。それ以前から北岡さんとは面識があったが、改めて書店で一般販売する卓球専門誌の趣旨を説明した。

創刊後、一部のメーカーから「卓球王国への広告出稿(スポンサー)を見合わせるべきだ」という声が上がった。当時は『卓球レポート』『ニッタクニュース』『TSPトピックス』といったメーカー専門誌が主流であり、業界内には当然「後発の『卓球王国』とは何者だ?」という空気が流れていた。そのスポンサー撤退論は当時のニッタクの向原一雄社長の耳にも入り、一時はそちらの方向に傾きかけていたという。その舞台裏を、のちに北岡さんから聞いた。 当時部長だった北岡さんは、「自社に『ニッタクニュース』があるとはいえ、書店で誰もが買える専門誌はあったほうがいい。ニッタクとして広告は出すべきだ」と、当時の社長に直訴してくれたのだ。

結果として一部のメーカーは離れていったが、ニッタクは創刊時から今日に至るまで、変わらぬスポンサーであり続けてくれている。すべてのスポンサー、そして読者の皆様が恩人であることは言うまでもないが、あの時の北岡さんの熱意とご尽力には、今も感謝してもしきれない。

2011年の東日本大震災の際にも、真っ先に被災地に駆けつけ、卓球専門店の方々を励まされたのは北岡さんだった。 2023年に会長職から社長に復帰された際、その年の12月に食事をご一緒する機会があった。「また(社長に)戻ることになりました。協力してください」と言われた。 今でこそ全国的に定着している「ニッタク」ブランドだが、その席で北岡さんは、なぜニッタクが東日本で特に愛され、各地方協会などとこれほど深く結びついているのか、そのルーツを教えてくれた。

かつて、ニッタクが東京・上野の池之端に本社を構えていた頃。東北からの終着駅だった上野駅に降り立った卓球人たちは、大きな荷物を抱え、駅から歩いてニッタクを訪ねてきたという。決して裕福な協会ばかりではなかったため、彼らは荷物の中に地元の特産品などを詰め込んで持参し、ニッタクに届けては、代わりに大会用の使用球を持って帰っていった。 「昔は一種の物々交換だったんですよ。でもね、それがこれだけ長い年月にわたる、ニッタクと地方の協会、そして卓球人たちとの深い絆になっているんです」 北岡さんはそう言って、嬉しそうに笑った。ボールメーカーならではのエピソードになぜか温かい気持ちになった。

体調があまり優れないと伺っていたが、その日は大好きなお酒を本当に美味しそうに呑まれていた。「北岡さん、体は大丈夫ですか」と心配すると、「今日くらいはいいでしょ!」と相好を崩し、実に楽しい時間を過ごさせてくれた。

コロナ禍前には、「春の卓球メーカー展示会に代わる試みとして、全メーカー合同でモーターショーのような大規模な卓球イベントをやりましょう」という企画を持ちかけたことがある。残念ながら実現には至らなかったが、北岡さんは一メーカーの社長という立場を超え、卓球界全体の未来を見据えて熱心に賛同してくれた。 誰からも好かれる温厚なお人柄。一見おどけた素振りを見せながらも、その裏には極めて鋭い思考と決断力があった。パートナーシップを結んでいた世界最大級のメーカー、中国・紅双喜の幹部たちも、北岡さんを「朋友(ポンヨウ)」として深く尊敬していた。まさに、熱い義理人情を体現するような人だった。

単にニッタクの社長という枠に留まらず、長年にわたり日本の卓球業界を力強く支え続けてきた北岡さん。
誰に対しても腰が低く、偉ぶらず、これほど多くの人に慕われたメーカー社長を私は知らない。その突然の訃報に、今、多くの関係者が深い喪失感に包まれているに違いない。

卓球メーカーとして、そして卓球界のリーダーとして偉大な足跡を残された北岡さん。ニッタクが1920年に前身の「ハーター商会」としてセルロイドボールの製造を開始してから、今年で106年目を迎える。 聞けば、北岡さんが旅立たれた7月15日は、1947年に「日本卓球株式会社」として創立された、まさに79回目の創立記念日当日だったという。

北岡さんの、あの人懐っこい笑顔が脳裏から離れない。 会社の創立記念日に天へと召された北岡さんは、今頃、ニッタクの後輩たちだけでなく、日本の卓球界全体のさらなる発展と成功を、温かく見守ってくれているに違いない。 合掌。(卓球王国発行人・今野昇)

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