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ペンホルダーは死なず。Vol.1「ペン速攻、伝説の男、河野満が吠える」

<卓球王国2007年1月号より>

男子の五輪金メダリストは8人いるが、そのうち4人がペンホルダーである。

昨今、卓球の低年齢化が進み、子どもたちが握りやすく、両ハンドを自在に振れるシェークハンドが主流となっているが、卓球という競技の中で、「ペンホルダー」の存在は消えるものではない。

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Penholder Never Dies.

ペンホルダーは死なず。
Vol.1

裏面を使わず表面だけでプレーする2004年五輪金メダリストの柳承敏。フットワークを生かしたドライブプレーが武器

 

今の時代、ペンが勝てないわけがない
ペン速攻、伝説の男、河野満が吠える。

ペンホルダーが勝つためのMUST 5

1. 両ハンドのプレーとオールフォアを使い分ける

スピード接着剤が出てきてからペンホルダーの表ソフト速攻型は苦しい時代に突入した。しかし、スピード接着剤が07年4月からは12歳以下の大会で、そして08年9月からは全面禁止になることで、ペンホルダーの表ソフト速攻型は復活できると思う。ボールスピードが落ちた場合は表ソフトはさらにチャンスは出てくると思う。
また、ペンホルダーとは言え、両ハンドができなくてはならない。フォアハンドはうまくて、強いけれども、バックハンドは弱いというスタイルでは今の卓球では勝てない。両ハンドと言っても、フォアハンドとバックハンドを使う比率を同じにするという意味ではない。もちろん同じくらいに使えることも大切だが、時によってはオールフォアでも戦えるというのがペンホルダーの特長であり、良い面でもある。
たとえば、2004年五輪金メダリストの柳承敏の卓球を見ると、フォアハンドもうまいし、フットワークもすばらしい。だが、バックハンドも振れるし、バックハンドのブロックは完璧に止めることができてミスがない。これもある意味、両ハンド卓球である。しかし、彼の卓球の基本はオールフォアに近いものだ。試合の状況や相手によって、両ハンドとオールフォアを使い分けることができるのが、柳承敏の特長であり、強みでもある。ペンホルダー攻撃型は「両ハンドとオールフォア」という両刀を使わなければならない。
その分、ペンホルダーはシェークハンドよりは練習の時間が長くなるかもしれないし、大成するまで時間がかかるかもしれないが、それは覚悟するべきことだ。

 

2. 3つの打法を使い分け、ミックスさせて多彩なプレーを実現

ペンホルダーには3つの打ち方をマスターしてほしい。
ひとつはボールをこすり上げるドライブ打法、2つ目は弾いて返すミート打法、もうひとつはボールを抑える打ち方。この3つの打法はフォアハンドでもバックハンドでもできなくてはいけない。特に表ソフトを使用する人はこの3つの打法が必要になる。
1番目のドライブ打法は打球が安定するし、裏ソフトなら決定打としても使える。2番目はスマッシュなどの時に使うミート打法、3番目は表ソフト使用選手が使いやすい、押しながら上から抑えるような打ち方で、このボールはナックルになって飛んでいく。特に3番目の打法をマスターできるとシェークハンド攻撃型に対して効果を発揮する。
私が77年の世界選手権を戦った時も、ヨーロッパに対してベンチで荻村伊智朗さん(故人)に、「河野、ドライブに対して前でショートするな。少し下がって、振っていけ。ナックルで返せ」とアドバイスを受けた。もちろん、ふだんから3番目の押してかぶせる打ち方は使っていたし、それで相手のネットミスを誘い、その中に弾く打法を入れたり、回転をかけたりという打法のミックスが効果的だった。
ハンガリーのヨニエル、ゲルゲリーという両ハンドドライブ型に対して、バックに来たドライブを押してかぶせるようなこのバックハンドが効果を発揮し、相手はネットミスを連発した。
またドライブしてきたボールをブロックする場合には、ただ当てるだけのショートでは相手のチャンスボールになってしまう。伸ばす、横にこすって曲げる、そして台上でツーバウンドするくらいに止めるというような種類を持たなくてはいけない。
トップレベルになれば、単調な打法や球種では相手に狙われる。ひとつのボールに対して、様々な打法と球種のバリエーションで対処するのが、世界レベルであり、ペンホルダーでもシェークハンドでもそれはできるし、必要なのだ。

 

こうのみつる/77年世界チャンピオン・全日本選手権で3回優勝・ペン表ソフト両ハンド速攻型

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