異質プレーの新境地を見せる令和のトリックスター
ヤサカ
トリックアンチ
ある意味、最も印象的な新製品だ。トリックアート(だまし絵)をモチーフにしたカラフルなパッケージでお目見えした『トリックアンチ』。表面が極端に滑るアンチスピンラバーは、今や極めてニッチなカテゴリー。そこに新製品を投入したのが、堅実な製品開発で知られるヤサカだというのも、ちょっとした驚きだ。
「社内で『異質ラバーで極端なものに挑戦してみたい』という意見があり、極力弾まないアンチを試作してみたところ、扱いやすくおもしろいラバーになったので、微調整を行い商品化しました」(ヤサカ・矢尾板駿さん)。
同社の『アンチパワー』より反発力の低いスポンジを採用、さらにトップシートも硬くして弾性を抑えた。こうして『トリックアンチ』は粒高のような前陣攻守向きのラバーに仕上がった。
実際に打つと、かつてない低弾性ぶりに驚かされる。一般的な粒高よりも弾まず、相手の回転を無効化できるので、ブロックは非常に安定。さらにストップの止まり具合はえげつないレベル。相手の回転を無視したフリックや流しも自由自在だ。
こう書くと画期的なレベルで有用なラバーに思えるが、弱点はやはり低弾性にある。打ってもスピードは出ず、また返球はナックルの球質にそろってしまうので、相手に狙われるともろい。
粒高、半粒、アンチなどの「変化ラバー」に共通するのは、レベルが上がるほど、そのラバー単体の変化だけでは勝てなくなるという点。特にこの『トリックアンチ』はチャンスメイク用と割り切る必要があるだろう。しかし、際立った低弾性と回転無効性能により、常識を覆す異質プレーを生み出す可能性を秘めているのは確かだ。トリッキーなプレーを求める人は、ぜひ『トリックアンチ』で前陣異質プレーの新境地を切りひらいてほしい。
ヤサカ
アンチスピンラバー
●¥4,400(税込)
●厚さ:特厚・中
●㈱ヤサカ 03・3634・5158
photo >> Yoshinori Eto
text >> Hiromoto Takabe
<卓球王国2021年8月号より>
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