<卓球王国2022年8月号より>
令和の世に『正宗』。今年、開業75周年を迎えたヤサカの「和名」シリーズは、今だからこそ逆に新鮮で「刺さる」。カット用(=斬る)だからと伝説の刀工の名を冠するあたり、いかにもヤサカらしくてニヤリとさせられるが、その正体はただのカット用ラケットではなさそうだ。
カット型の選手なら、昨年(2022年)の全日本社会人3位の英田理志選手(愛媛県競対)の使用モデルであることはご存知の方も多いだろう。しかし、ヤサカの矢尾板駿さんは、「弊社としてはカット用ではなくオールラウンド用という扱い。両面に裏ソフトを使用している英田選手のように、このラケットも両面に裏ソフトを貼ることを想定しています」と語る。
実際に英田選手と同じく、フォア面に『ラクザ7』、バック面に『翔龍』を貼って打ってみたが、まるでボールが吸い付くような独特のフィーリングがある。板厚7・2㎜の桧3枚合板はカット用としては「極厚」。しかし、軽量な桧材を使用し、横幅の広いブレード形状で重心がグリップ寄りなので、非常に振り抜きやすいのだ。
しかもボールのとらえ方によって、打球の飛び方が大きく変わる。ボールを「グッ」と食い込ませるように打てば、攻撃ラケット顔負けの威力が出るし、カットで「シュッ」とボールの表面を切ると飛びが抑えられる。
弊誌別冊『卓球グッズ2022』のカットマン試打でも、「両面裏ソフトのほうがコントロールしやすく、攻撃も威力が出る」と評価された『正宗』。英田選手は、「『正宗』の良さは慣れてからわかってくる」と語る。
「ぼくも柳3枚のカット用ラケットから変えた時は、桧3枚のブレードは『扱いにくい』と感じました。でも使っていくうちに慣れてきて成績も急上昇した。しばらくは我慢して使ってほしいし、使えば使うほどをってんできます」(英田)
桧の美しい木目を生かした上板と、シンプル極まるグリップデザインに「凛」とした雰囲気をわせるこのラケット。頼れる相棒になるまで、じっくりつき合う価値アリだ。
●オールラウンド用シェークラケット
●¥19,800(税込)
●木材3枚
●板厚:7.2㎜
●平均重量:85g
●グリップ:FL・ST
●㈱ヤサカ 03・3634・5158
photo >> Yoshinori Eto
text >> Taro Yanagisawa
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