銅メダル決定戦でのオフチャロフの歓喜の余韻が残る中、始まった男子シングルスの決勝。馬龍と樊振東は前日、それぞれオフチャロフと林昀儒との大激戦を制して決勝に駒を進めた。準決勝の途中で会場に来たIOCのトーマス・バッハ会長が試合を見つめている。
決勝は出足の1ゲーム目、馬龍がいきなり7-0とリード。この二人の試合で甘いボールは来ない。わずかにボールが長くなった時に攻め込む。長いラリーにはまだならないが、馬龍が11-4で先取した。
2ゲーム目、樊振東はスタートから攻めこみ、自らの得点を狙っていく。7-7から先にゲームポイントを取ったのは樊振東。しかし、10-8から馬龍が10-10に追いつく。11-10から3球目のバックドライブをストレートに決めた樊振東がゲームを取り返した。
3ゲーム目はお互いがレシーブや3球目から先にフォアで攻める展開。6-6から馬龍が9-6とするも樊振東が攻めて9-8になったところで馬龍がタイムアウト。直後の1本をバック対バックからフォアドライブを決めて馬龍が10-8とゲームポイントを奪った。そして、次のハーフロングのツッツキに対してフォアドライブで打ち抜き、馬龍が11-8で取り、ゲームカウントを2-1とした。馬龍のタイムアウトが功を奏した。
4ゲーム目、馬龍5-3、7-5とリードし、樊振東がストレートに打つバックドライブをカウンターで狙い、9-5と離す。10-6から10-9になるも、最後は樊振東のストレートへのチキータを強烈なドライブでクロスに打ち抜き、11-9で連取し、金メダルに王手をかけた。
5ゲーム目、樊振東は狙われていても、ストレートへのバックドライブで活路を見いだそうとする。8-2と樊振東が大きくリードを奪い、11-3で樊振東がゲームを取り返した。二人の間に凡ミスはほとんどない。樊振東はストレートのバックドライブ、馬龍はフォアのカウンタードライブという得点手段をどれだけ繰り出せるのかという展開になっている。
6ゲーム目、1本目から馬龍が気合の声を上げる。明らかにこのゲームでの決着を望んでいる。フォアドライブで攻め込み、5-2としたところで樊振東がタイムアウト。しかし、馬龍はここからギアを上げて、フォアの連続ドライブで突き放そうとし8-4、9-5と金メダルに近づく。樊振東のバックドライブのミスで10ー6とマッチポイント。10-7となったところで気合の声を上げる馬龍。
最後はバック対バックで樊振東のボールがネットにかかり、馬龍は優勝を決めた。直後に両腕を掲げハートマークを作った。家族愛にあふれる馬龍の妻へのメッセージだったのか、中国の馬龍ファンへの感謝だったのか。
女子の鄧亜萍、張怡寧に次ぐ3人目、男子では初の五輪連覇を達成。32歳という年齢は史上最高齢の金メダリストだが、馬龍のフォアハンドで決めにかかる卓球はベテランのそれではなく、昇り龍の若々しいプレーそのものだった。
卓球競技は明日は休養日となり、日曜日から団体戦が始まる。それはシングルスで見せた中国の高い壁を越えていく日本チームの戦いでもある。
●男子シングルス決勝
馬龍(中国) 4、-10、8、9、-3、7 樊振東(中国)
表彰式後、金メダルを獲得した馬龍はコメントを残した。
「中国同士の決勝という目標を達成し、新たに団体での金メダルを決意している。今日はあまりプレッシャーを感じずにプレーできたと思う。樊振東のような相手と対戦したら最高の状態でプレーしなければいけないし、わずかな相手のミスを利用し、自分はミスを犯してはいけない。
彼とぼくの違いは、五輪という最高の舞台で優勝したことがあるという経験の差だけだ。
長年、ぼくを支えてくれた家族、そしてチームに感謝したい」(馬龍)
一方、準優勝に終わった樊振東のコメント。
「勝てるチャンスはあったけど、今日はそのチャンスをものにすることができなかった。初の五輪での銀メダルは誇りに思っている。さらにハードな練習を自分に課し、もっと強い卓球を作っていく」(樊振東)
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