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パリ五輪王者・樊振東が世界選手権代表を辞退。ロンドンへ行かない彼はどこへ向かうのか

中国卓球協会は4月8日、世界選手権ロンドン大会(団体戦)に出場する代表メンバーを発表したが、そこに2024年パリ五輪金メダリストである樊振東(ファン・ジェンドン)の名はなかった。昨秋からドイツ・ブンデスリーガのザールブリュッケンに所属し、11月の全中国運動会ではシングルス優勝を果たすなど、実力は依然として世界トップクラスにある樊振東だが、今回は「個人的な理由」により出場を辞退したと伝えられている。

かつては「卓球マシーン」と称されるほどストイックだった彼に、大きな変化が見られ始めたのはパリ五輪後のことだ。ザールブリュッケンのチームメイトによれば、最近の樊振東は練習量を絞り、イタリアでの冬季五輪の観戦に出かけるなど、かつてのような世界選手権に向けた猛烈な調整は行っていなかったという。来季はドイツの名門ボルシア・デュッセルドルフへの移籍も決まっており、主戦場を完全に欧州へと移しつつあるのが現状だ。

この背景には、中国国内での過激なファン文化「飯圏(ファン・サークル)」への強い拒絶感がある。樊振東は、宿泊ホテルの部屋に不審者が侵入する事件や、ネット上での深刻な誹謗中傷、個人情報の流出といった被害に長年苦しめられてきた。昨年7月のテレビのインタビューで「スポーツはファンクラブの戦場であってはならない」と苦言を呈し、熱狂的な視線から逃れ、一人の人間として自由な時間を謳歌したいという願いが、現在の国家代表からの離脱に繋がっているのではないか。

中国協会側としては、次代のエース王楚欽を支える柱として彼の力が必要不可欠だが、樊振東自身は国家の重責を背負う戦いから解放され、自分自身のためにラケットを振る生活を優先しているように見える。現在の調整状況や心理状態を鑑みれば、2028年のロサンゼルス五輪に出場する可能性は低く、稀代の天才プレーヤーは今、国家代表としてのキャリアに事実上の終止符を打つつもりなのかもしれない。

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