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中国リポート

朱雨玲が国家チームを引退。忘れられない10年前の「笑顔なき優勝」

11月15日、2015年世界選手権女子複優勝、2017年世界選手権女子単準優勝の朱雨玲が国家チームを離れ、現役引退の道を選んだことを『封面新聞』ほか複数の中国メディアが伝えた。

2021年9月、甲状腺がんの手術を受けていたことを自らの微博(ウェイボー/マイクロブログ)で明かした朱雨玲。その後は国家チームのメンバーとしての活動はなく、今後の去就に注目が集まっていた。

現在は四川省成都市にある電子科技大学の経営学博士コースに入学。10月21日に行われた2022年度入学生の入学式では、新入生を代表して朱雨玲がスピーチした。「今日から私の新たな環境での新たな生活が始まります。再び先輩やクラスメートたちと友人になり、ともに学び、ともにより良い自分に出会えることをうれしく思います」(朱雨玲)。学業と同時に、電子科技大のグループ企業である広州の半導体企業では幹部のポストを与えられるという。

1995年1月10日生まれの朱雨玲は、四川省綿陽市の出身。5歳で卓球を始め、2010年1月に国家2軍チーム入り。その年の世界ジュニア選手権・女子シングルス決勝で、女子団体決勝で敗れていた石川佳純にリベンジを果たしてタイトルを獲得した。

2010年世界ジュニアで初優勝した朱雨玲。まだ15歳だった

記憶に残るのは2012年にインド・ハイデラバードで行われた世界ジュニア選手権。現・男子世界チャンピオンの樊振東が男子シングルスでセンセーショナルな優勝を飾る中、朱雨玲は圧倒的な強さを見せ、女子シングルスで2回目の優勝。世界ジュニアのシングルスを二度制したのは朱雨玲が初めてだったが、笑顔ひとつ浮かべずに足早にコートを去った。当時から「目標はオリンピックでの金メダル」と公言していた朱雨玲。その後ろ姿は「なんで今さら、ジュニアの大会に出なきゃならないの?」と言っていた。

2012年世界ジュニアで優勝した直後。ニコリともせず、足早にコートを去った

その後、順調にキャリアを積み上げ、2017年世界選手権・女子シングルス決勝では先輩の丁寧(ディン・ニン)に惜敗して2位。2018年12月の時点では世界ランキング1位の座にあり、競技人生のピークで東京五輪代表の座をつかむかと思われたが、この年の11月に行われたスウェーデンオープンとオーストリアオープンの決勝で伊藤美誠に完敗。中国最大のライバルに2戦連続で敗れたことが、彼女のキャリアに大きく影響した。

2017年世界選手権で準優勝。陳夢とともに次代の中国女子を担うと思われたが……

2019年世界選手権・個人戦では、世界ランキング2位にも関わらずシングルスの代表から外れ、若手の孫穎莎と王曼昱が一気に台頭する中、実質的に東京五輪への道が閉ざされた。その東京五輪で頂点に立ったのは、同年代のライバルとして切磋琢磨してきた陳夢だった。

相手を圧倒するパワーの持ち主ではなかったが、アスリートとしての能力が高く、「心・技・体」を兼ね備えたプレーヤーだった朱雨玲。泥臭くとも運命を引き寄せる力強さにやや欠けていたようにも思えるが、個人的に冷静かつクレバーな彼女のプレースタイルは大好きだった。

2013年全中国運動会の時、CCTV(中国中央電視台)の取材で「女子シングルスの優勝予想は?」と聞かれ、意気揚々と「朱雨玲!」と答えたその翌日、朱雨玲がカットの胡麗梅の前に初戦敗退。少々恥ずかしい思いをしたのも、今は良き思い出。卓球でも遺憾なく発揮されたその明晰(めいせき)な頭脳を活かし、第二の人生に幸多からんことを祈りたい(柳澤)。

横浜で行われた2018年アジアカップで優勝。笑顔はキュートでした

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