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WTTは卓球のメジャー化の起爆剤か、内紛の火種なのか!?

2020年のコロナ禍の中、ITTF(国際卓球連盟)がリモート会議で一気に進めていったのがWTT(ワールドテーブルテニス)だ。

世界選手権釜山大会の注視を発表した直後に、WTT中東ハブの2大会(カタール・ドーハ 3月3~6日/コンテンダー、8日~13日/スターコンテンダー)を発表した。

今までの世界の卓球界は・・・

【ワールドプラチナツアー】【ワールドツアー】【チャレンジプラス】【チャレンジ】

と分類され、世界ランキングが付与され、年間での獲得ポイントの高い選手がグランドファイナルに出場できる仕組みだった。

WTTは卓球をよりメジャー化にして、グローバルスポーツとして広めていこうというビジョンのもとに作られた組織だが、ITTFの中で独立した形になっているように見える。仕切る3人のディレクターのうち、二人はオーストラリア人(ステファン・デイントン=ITTF CEO、マシュー・パウンド)でもうひとりはカタールのカリル・アル・モハンナディ(ITTF会長代理)で、評議会議長は中国の劉国梁(中国卓球協会会長)だ。

WTTの構造は今までのワールドツアーの形を変えたものにも見える。下記の順番が大会の格付けである。

【グランドスマッシュ】(4大会)賞金3億円

64人ずつのシングルス・24ダブルス・16ミックスダブルス

●●●●●●●●●●●●●●●

【WTT カップ ファイナル】(2大会)

16人シングルス・8ダブルス

●●●●●●●●●●●●●●●

<WTTシリーズ>賞金5億円

【WTTチャンピオンズ】(8大会)

32シングルス

○○○○○○○○○○○○○○○

【WTTスターコンテンダー】(6大会)

32シングルス

○○○○○○○○○○○○○○○

【WTTコンテンダー】(最大14大会)

4大会のグランドスマッシュはまるでテニスのグランドスラム(全英・全豪・全米・全仏)である。これは二人のオーストラリア人の発想なのか。

メジャー大会(グランドスマッシュ)を軸にして、全く新しいツアーのシステムを構築、実行するものだが、WTTに対しては各協会のネガティブな反応がある。

12月のWTTマカオ大会で優勝した馬龍

 

バイカートITTF会長の支持母体とも言えるドイツ卓球協会は11月18日に、長文のレターを全協会に送り、このWTTの資金の不透明化、ごく一部のITTFの人(特にシンガポールにいるITTF職員)によって進められようとしていることを指摘し、伝統ある国際トーナメント(たとえばドイツオープンやジャパンオープン)がなくなったり、もしくは価値の低いものになり、オリンピックや世界選手権など、各協会が政府関係などからの補助金を受ける対象となる大会の価値が低くなることに強い懸念を表明した。

テニスやゴルフでもグランドスラムのようなメジャー大会の価値や賞金が大きくなり、プロ選手にとって五輪や世界選手権は名誉だけの価値の低いものになることをヨーロッパの協会は懸念している。

それは日本でも同じだが、オリンピック委員会やスポーツ省(もしくはスポーツ庁)からの補助金は、メジャー賞金大会ではなく五輪、世界選手権、大陸競技大会での成績が対象となっている。補助金に頼り予算が編成される各協会の強化本部にとっては、五輪、世界選手権の大会のほうが比重が大きいのだが、ITTFが自ら五輪や世界選手権の位置を低くしようとしているように見えるのだろう。

ドイツ卓球協会はレターの中で「ITTFのCEOは、ITTF内の決定者として、またWTTディレクターとしての彼の職務においても、ITTF会長の意図と助言に反して行動し、行動しているようだ」と書いている。つまり、バイカートITTF会長の意に反して、ITTFのデイントンCEOがWTTを促進していることに異を唱えていると読み取れる。

今回の、シャララ氏とITTFの和解が意味するのは、もしかするとシンガポールを拠点とするITTFのWTTグループに対抗するために、バイカート会長とシャララ名誉会長がタッグを組むという意味なのだろうか。

そんなきな臭い状況の中、ITTFはWTTを2021年3月に中東ハブの2大会を開催すると発表。規模の大きさが違うとはいえ、世界選手権中止発表の直後に、WTT開催を発表するという、まるでドイツ卓球協会の指摘を裏付けるような試合スケジュールとなっている。

WTTの資金の不透明さ、一部の人への権力の集中を指摘されているが、それはまるでシャララ氏が代表を務めたTMSへの批判をなぞっているように見える。

まだしばらくITTF内の不穏な動きは続くかもしれない。コロナ禍の中、世界の卓球界は良い方向に進んでいるのか、それとも伝統を失う方向に進んでいるのか。

今まで日本卓球協会は世界ランキングを最重要視して、選手たちはワールドツアーを優先してきた。そのやり方も根本から変わっていくのかもしれない。  (今野)

ブラックとオレンジに統一され、スタイリッシュな見せ方をしたWTTマカオ

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