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帰ってきた女王の言葉vol.2[おかえり、カスミン]

フォハンドの強さが目立った石川

 

「負けている時のほうがモチベーションが高いですね。

負けている時のほうがチャンスだと思います」

 

平野さんと福原さん二人に

競ることはできても

勝つことは難しい。

それをやって決勝に上がって

きたから強いんだろうと思った

 

全日本選手権女子シングルス。「すごく緊張していた」と言うものの、石川佳純は順調に勝ち上がっていく。準決勝の若宮三紗子(日本生命)戦では1ゲーム目を奪われ、今大会初めてゲームを失ったが、その後は落ち着いて取り返し、4ー1。

決勝の相手は高校2年の森さくら(昇陽高)。準々決勝で平野早矢香(ミキハウス)を4ー3、準決勝では福原愛(ANA)をストレートで破り、五輪メダリスト二人を下しての決勝進出。

ジュニアではベスト8に終わっていた森だが、一般に入ってまさに破竹の勢いで勝ち上がり、福原戦を見る限り、決勝の石川戦でも競り合いになることが予想された。しかし、勝負は1ゲーム目だった。7ー10とゲームポイントを奪われた石川がそこから盛り返し、14ー12と逆転してゲームを奪って、完全に試合の流れを引き寄せ、優勝へ突き進んだ。

●ーー決勝の相手は高校生の森選手でした。彼女は平野選手に勝ち、そのまま準決勝では福原選手を圧倒するような勢いを見せていました。

石川 準決勝は同時にやっていたから全然見ていなくて、福原さんが負けたのを知らなかった。今までだとありえない。いつも横の試合とかチラチラ見るのに、今回は見ないようにしたんじゃなくて、本当に知らなかった。試合が終わってから、「あっ、森さんが勝ったんだ……」とその時わかった。自分の試合がスクリーンに映っているのも気づかなかった。

 

●ーー完全にゲームに入り込んでいたんだね。

石川 自分ではそういう意識は全くなかったんですけど。森さんが4ー0で福原さんに勝つというのは本当にすごいと思った。平野さんと福原さん二人に……競ることはできても勝つことは難しい。それをやって決勝に上がってきたのだから強いんだろうと思ったし、私の初優勝の時も同じ高校生だったから、私の時と同じ気持ちなのかなと。

 

●ーー確か1年前のジャパントップ12で対戦していて、4ー2で勝っています。

石川 森さんとは2回目ですね。前回やったビデオとかを見たりしましたが、1年経っているので、試合をやりながら考えようと。気持ちとしては、すごく決勝が楽しみでした。お客さんがたくさん入っていて、その中で1台でやることにワクワクして、楽しみで、久しぶりにそういう気持ちになりました。初優勝の時もそういう気持ちでしたね。今回は全体を通して最初の試合から楽しみだと思えましたね。

 

●ーー決勝は1ゲーム目がポイントでした。7ー10でいきなりゲームポイントを奪われ、あのゲームを取られたら試合の流れが変わったかもしれない。特に出足で少し離された。

石川 相手の調子はすごくいいなというのはわかっていたし、もともと強い選手なので、1ゲーム目をリードされても……それが試合ですから。7ー10の時に1ゲーム目負けるかもと思ったけど、このゲームを落としてもいいやとは絶対思わなかったし、あのゲームを取れて試合の流れに乗れた。あそこでばん回して取れたのは自分の成長できている部分かもしれません。

 

●ーー準決勝の森対福原の試合での森選手の強さを見たら、決勝も接戦になるかも、というのが大方の予想だった。ところが決勝の1ゲーム目をしっかり取っているし、回転の変化などで相手のミスが目立っていました。

石川 自分の力を出し切れたし、今までよりも強い自分で戦えたかなというのが今大会の感想です。

 

●ーー4ゲーム目、優勝を目前にして10ー9でタイムアウトを取り、ベンチの陳莉莉さんに厳しく言われていたのが、オーロラビジョンにも映し出されたけど(笑)。

石川 実際にベンチに帰ってすごい怒られたんですよ(笑)。10ー6から3本連続簡単に失点して、メチャ怒られました。

「練習、やったでしょ! もっとしっかりやって! 思い切って!」と怒られて、それで自分も「何やってるんだろ」と背中を押してもらい、自分に渇を入れられた。だから勇気を出して次にロングサービスを出せました。すごい怒られていて……わかってました?

 

●ーー 優勝目前なのに怒られている様子がオーロラビジョンに思いっ切り映っていた(笑)。さすがにあそこで優勝を意識したのかな。

石川 ちょっとだけ。それまで全然意識してなかったのに、10ー6になった時にちょっとだけ。そういう時はばん回されます。でも、そういう苦い経験もたくさんしてきたので、そこでぐっと我慢しました。

 

●ーー優勝した瞬間、感極まって涙が出てました……。初優勝した時でも泣かなかったのに。

石川 勝った時はすっごくうれしかった。この2年間いろんな人に支えられていたし、そういう気持ちがこみ上げてきたし、「ああ、やっと勝った」と。

 

●ーー陳莉莉さんにコーチを受けているのはいつからですか。

石川 去年の7月、8月くらいからだから、まだ半年くらいですね。

 

●ーー陳莉莉さんの現役の時のプレーは見ていないですね。(編集部注:陳莉莉・元全中国チャンピオン、1987年に来日し、全日本選手権女子ダブルス優勝、全日本社会人選手権優勝)

石川 見てないけど、練習の時にいつもお手本を見せてもらいます。技術的なことも精神的なこともすべてのことを教えてもらっています。毎日の練習は厳しいけどすごく楽しいし、新しい技術を覚えたりするし、進歩できていると思います。

 

●ーー最近は男子のナショナルチームの練習に一緒に参加していると、全日本男子の倉嶋(洋介)監督からも聞いています。

石川 前から入って一緒に練習をやりたかったんですけど、やっぱりナショナルチームなので、村上監督(恭和・全日本女子)から倉嶋さんに言ってもらいました。もう半年くらい経ちますね。

 

●ーーそれは男子のボールを打たなければいけないと感じたから?

石川 男子の強いボールに対しては手先だけでは絶対入らない。体全体を使わないと入らないので、それを体で覚えたいとすごく思っていました。倉嶋さんも田㔟さんも、男子選手と同じようにいろいろと教えてくださるし、チキータとかフォアドライブでも男子の技術を教えてくださるので、それがすごく役に立っていると実感しています。トレーニングも男子の中に入れてもらってやらせてもらっています。

 

●ーー男子にも勝つと聞いているけど(笑)。

石川 いや、いや、ハンディもらっていますから。

 

●ーー小山ちれ(全日本選手権8回優勝)さんが国内で勝ち続けている時に、女子で練習する相手がいないからといって、男子の全日本ベスト8くらいの選手と試合しても勝っていたし、中国の女子も男子の相当強い選手でも勝ちますよね。

石川 そうです、そうです。中国の女子は男子の2軍に普通に勝ちますよね。

 

●ーー男子のボールを受けていると女子のボールが合わないことはないのかな?

石川 合わないことはないけど、男子のボールを受けていると中国の女子のボールがちょうど良い感じです。もちろん、それまでそういう感覚は持っていませんでした。男子のボールだと反応できないようなボールがあるし、中国の女子のボールも今までは反応できないこともあったけど、今は少しずつですけど反応できるようになってきました。

男子だと普通にツッツキとかするとバーンと打たれるじゃないですか。だから、どうやって打たせないように返すかを考えることは、中国の女子と対戦した時も役に立ちます。強い人とたくさんやらせてもらっていてありがたいです。

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