卓球には直径40mm、重さ2.7gの硬式と呼ばれるボールと、直径44mm、重さ2.4gのラージボールがある。ラージボールは大きくて軽いために回転はあまりかからず、スピードも出ない。もともと普及のための「新卓球」だったのだ。
ラージボールのふたつの全国大会(全国ラージボール大会・全日本ラージボール選手権)の開催前から気になる情報が入ってきた。一見、全国で盛んに行われているようにも見えるのだが「ラージボール人口が減っている」という話だ。特に卓球メーカーはその売上から感じ取っている。
順調に競技人口が増えていると誰もが思っていたのに、「減少している」とはショッキングな話だ。特にコロナ禍で卓球から離れた高齢者の方が、ラージボールに以前のように戻ってきていない。かつ新たにラージボールを始める人は増えていない。ほとんどが硬式と同時にプレーしたり、硬式から転向した人たちだ。
そもそもの「ラージボールの始まり」は今から40年近く前の話だ。有名タレントが「卓球はネクラ(根暗)でダサイ」というジョークを発したことが卓球のイメージダウンとなり、協会も業界も大きなダメージを受けた。協会の登録者は減り、何より卓球愛好者、競技者が肩身の狭い思いをしていた。当時、日本卓球協会の専務理事だった荻村伊智朗は大きなショックを受け、同時に立ち上がった。そして、卓球の「イメージ回復大作戦」が始まった。
卓球大改革の中で生まれたのが当初「新卓球」と呼ばれたラージボールだった。実に12種類もの試作品が出来上がり、大きさや重さもまちまちだった。最終的に現在の直径44㎜、重さが2.2~2.4gのオレンジボールとなった。
「チャンピオン・スポーツとドゥ(Do)・スポーツに分けようと考えた。温泉で卓球をやったことのある人はたくさんいる。将来的に中高年の人が増えるし、かつ卓球はボケ防止にも良い」「そもそもゲートボール人口を卓球に取り込みたい、新しく卓球人口を掘り起こしたい、というところからスタートした。初心者でもラリーが続くようにボールの大きさ、軽さを考え、最終的に最適なボールを決めていった」(当時の日本卓球協会・藤井基男事務局長)。
当初は初心者の部(カテゴリー)を作っていたのだが、今では誰もがラリーを楽しめるラージボールではなくなっている。日本卓球協会が主催していた「全国オープン温泉卓球」も消えていった。現在、ラージボールは競技志向を強め、新たなチャンピオンスポーツの方向性に走っている。
チャンピオンスポーツとしてのラージ、普及のためのラージという両輪で走るべきだ。チャンピオンスポーツの傾向が強くなればなるほど普及はおざなりになってしまう。
36年前の初心を思い出し、「卓球を楽しんでもらうためのラージボール」を取り戻すべきだろう。
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[クローズアップ]ラージボールよ、もどっておいで。
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