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全日本卓球2025

元・札幌大谷エースのカムバック。21歳の全日本は「楽しみながら挑戦」

 敗れても、試合後の表情に3年前までの悲壮感はまったくなかった。3年ぶりの全日本女子シングルス出場となった買手日菜(個人)は笑顔で大会を後にした。

 

●女子シングルス2回戦
牛嶋星羅(サンリツ) 10、4、-7、8 買手日菜(個人)

日本リーガーを相手に接戦を展開した買手

 

 21歳の買手は、中学・高校時代は北の名門、札幌大谷でエースとして活躍。スケールの大きな両ハンドドライブで全中シングルスでベスト8、インターハイシングルスでもベスト16と、全国でも活躍を見せた大型左腕だった。

 しかし、全国で競い合った同級生たちが強豪大学や実業団へ進んでプレーを続ける中、買手は高校を卒業するとラケットを置いて短期大へと進学。2023年大会の混合ダブルスには「たまたま通過できて」(買手談)出場したものの、全国の第一線でその名を目にすることはなくなった。

 

 「高校まで精一杯やり切ると決めていたし、自分の結果にも満足できたので、一度は卓球をやめました。あとは卓球のない生活を送ってみたい気持ちもありましたね」(買手)

 

 ラケットを握らない日々の中でも、北海道内で大会があれば応援などで足を運んだ。そうするうちに「高校まで精一杯やった、満足できた」と思っていた買手の中に「もう一回、卓球がしたい」、そんな気持ちが芽生えた。

 現在は社会人1年目。週1回ほど、母校の札幌大谷で後輩たちに相手をしてもらいながら、高校卒業後、初めて北海道シングルス予選に出場。見事に予選を通過した。

 今日の試合でも粘り強くフォアドライブを打ち続け、日本リーグでも活躍する牛嶋星羅(サンリツ)から1ゲームを奪い善戦。最後は牛嶋の地力に屈したが、高校生の頃とは違った。

 

 「高校生まで『勝ちたい、勝たなきゃ』って思ってしまって、全日本は本当に嫌でした。『出たくない』っていうくらい(笑)。その結果、緊張して何もできない試合ばかりでしたね。

 でも、今はその頃とは違って『楽しみながら挑戦しよう』と思って卓球をやっています。今日も緊張はあったんですけど、楽しくやれました。試合についても大満足です。

 両親も試合の応援が好きだったので、また私が全日本に出場することで楽しんでくれているのもうれしいし、それも頑張る要因になっています」

 

 ちょっぴり回り道もしながら、再び帰ってきた全日本の舞台。東京体育館のスポットライトが買手を温かく照らしていた。

 

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