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インタビュー

【あなたの町の卓球ショップ vol.4】「八潮を日本一の卓球の町に」埼玉県八潮市・卓球家840

 卓球用品をネットショップで買う人が増えている現代だが、町の卓球ショップにもたくさんの魅力がつまっている。そんな卓球ショップとその店の店員さんを紹介するWEB限定企画「あなたの町の卓球ショップ」。第4回となる今回は、埼玉・八潮市に店を構える「卓球家840」さんをご紹介。

 つくばエクスプレス八潮駅より徒歩15分ほどの場所に店を構える「卓球家840」。毎月本誌に掲載される「用具ランキング」やグッズ特集にもご協力頂いている、2011年創業の比較的新しい卓球ショップだ。店主を務めるのは正海三弘さん。前職ではラバー工場に勤め、ラバーについての知識は日本一と言っても過言ではない正海さんに、卓球家840の特色を語ってもらった。

 

今までになかった「硬度測定」というサービス

価値のあるものを価値のあるように売る

ーーー本日はよろしくおねがいします。まず、卓球家840の創業はいつ頃でしょうか?

正海三弘(以下:正海):2011年の9月創業です。大学を卒業してから約7年間は八潮市にあるラバー工場に勤めて、ラバーの製造・開発や選手用ラバーの対応をしていました。働き始めてから7年くらい経った2011年に東日本大震災が起こって、40日間の震災ボランティアに行きました。その時にラバー工場も退社しました。そして、震災ボランティアから戻ってきた時に卓球ショップを始めました。元々卓球ショップをやってみたいという気持ちもあったし、当時、八潮市には卓球ショップがなく不便だった。前の職場があって馴染み深かったということもあって、八潮市で卓球ショップを開きました。創業当時から「八潮を日本一の卓球の町に」というのを掲げてやっています。19年には草加市にも卓球場をオープンしました。

 

ーーーなぜ卓球を職業にしようと思ったのですか?

正海:本当は普通に就職しようと思いました。大手企業に内定ももらっていたんですよ。でも、たまたまラバー工場の求人があって、受けてみたら受かっちゃいました。それが人生の失敗ですかね(笑)。嘘です(笑)。人生は冒険だから、何が失敗かどうかはわからない。「失敗の中に成功がある」ってマイケル・ジョーダンが言っていました(笑)。

地元・熊本の中学校で卓球を始めた正海さん。大学時代には全日学に出場するほどの腕前を持つ

 

ーーーショップを始めるにあたって困ったことなどは?

正海:ラバーのことは誰よりも詳しかったけど、接客業の経験はなかったので難しかったです。お客様への接し方や商品の発注、仕入れ、仕分けなどの当たり前の作業のすべてが難しかった。前職の関係で卓球界に知り合いはいたので、そこは恵まれてたかもしれないですね。

 創業当初は店に住んでいました。元々住んでいた家は卓球ショップを始める時に解約しました。ショップを始めるのに色々とお金がかかりますし。震災ボランティアに行っていた時はテントで暮らしていたので、店に住むのも特に問題なかったです。

 

ーーー卓球家840が他のショップに負けないところはどこですか?

正海:オリジナリティのある商品ですね。ラバーの硬度指定ができるし、ハンドソウも売っている。私のラバーの知識もありますし、他のショップには出せないクオリティを出すことができます。

 

ーーーラバーの硬度指定は普通のショップだとできないですよね。

正海:前職でトップ選手の用具対応をしていて、ほとんどの選手がラバーの硬度を指定してくる。でも、一般の方はラバーの硬度を選ぶことができなかった。一般の方の中にもこだわる方が多いのではないかと思って硬度指定のサービスを始めました。

 

ーーー硬度を1枚ずつ測定するのは大変ではないのですか?

正海:測定するのももちろん大変ですが、認知されるのが大変でした。最初は風当たりが厳しかったですね。パッケージを開けて硬度を測定して、商品に新たな情報を上乗せして売るのがだめなんじゃないかという声もありました。でも私は、価値のある商品を価値のあるように売りたいだけなんです。普通のものを安く売るのではなく、価値のあるものを正しい値段をつけて売りたいだけなのに、みんなに反対されましたね。

 私はラバー工場に勤めていたので分かりますが、ラバーは工業製品で生き物と言われているので全て同じなはずがないし、それを非難しているわけでもない。硬度がばらついているから良くないとは一言も言っていない。全てのラバーはメーカーが公表している硬度の範囲の中に収まっている。でも、その微妙な誤差の中でこだわる人がいるから、こだわる人には私もこだわりを持って売るようにしてます。

 こういう先駆者的な動きはすごく反感を買いやすいです。良いラバーを安く売ることは許されるのに、なぜ価値をつけて売ることはだめなのか。安く売ると値崩れを起こしてメーカーのブランド力が下がってしまいます。

 今はメーカーさんにも認知して頂いているので大丈夫です。私はラバーがだめだとは一度も言ったことはない。人間だってそれぞれ顔が違いますよね。同じ顔の人は一人としていない。でも、顔が違うから悪いというわけでもないですよね。それぞれの違いがあって、それを好きな人が選ぶ。それと同じです。同じようなものが集まるから価格競争になると思っています。今はだいぶ理解をしていただいているのでありがたい限りですね。

 

ーーーやはり硬度が違うと変わるものですか?

正海:全然違います。硬いほうが飛距離もスピードも出ますが、軟らかいラバーは扱いやすいしコントロールもしやすいです。

 

ーーーお客さんの中には硬度をこだわる方もいらっしゃいますか?

正海:こだわる方も結構いらっしゃいますし、お客様に合った硬度を選んであげようと思っています。基本的にはラバーに食い込ませて打つことができればイメージ通りのボールが打てます。しかし、ラバーが硬くて半分しか食い込ませられないとボールの飛び出しが早くなり安定感がなくなってしまいます。逆に軟らかすぎるとラバーが潰れてしまってラケットの板にボールが当たってしまい、回転がうまくかからなくてボールが下に落ちてしまう。そのため、硬度と厚みはその人に合ったものを選ぶのが良いと思います。

ラバーの硬度測定器。この機械でラバーの硬度を1枚ずつ測定する

広いとは言えない店内だが、卓球用具がぎっしりと敷き詰められている

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