11月23日よりスタートする世界選手権・個人戦 ヒューストン大会。大会に先駆け、各種目の見どころを紹介していく。今回は女子シングルス。男子シングルスで前回王者の馬龍(中国)が欠場したのと同様に、女子シングルスも前回大会で悲願の初優勝を果たした劉詩ウェン(中国)が「心身の調整」のために欠場。こちらも誰が勝って初の世界女王が誕生することとなった。
日本から女子シングルスにエントリーするは伊藤美誠、石川佳純、平野美宇、早田ひな、芝田沙季の5名。石川は7度目、伊藤と平野は4度目、早田と芝田は初のシングルス出場となる。中でも最もメダルに近い位置にいるのは伊藤。東京五輪では銅メダルを獲得し、日本女子初のシングルスメダリストとなったが、表情に笑顔はなし。卓球王国2021年12月号のインタビューでは五輪終了翌日に「世界選手権で中国選手に勝って優勝すると誓った」と語るなど、今大会へのモチベーションは相当に高い。当然、中国も伊藤を徹底マークしてくるが、「誰が来ても勝つ」、そんな強い気持ちで初の世界選手権表彰台に挑む。
石川は今大会の日本代表で男女通じて最年長。16歳で初のシングルス出場を果たした2009年大会ではサプライズのベスト8入りを果たしたが、以降はベスト8が一度と世界選手権ではなかなか上位に進めないでいる。東京五輪という大きな節目を終え、新しい石川佳純を見せてほしい。今回の日本代表で唯一シングルスでメダル獲得経験のある平野も東京五輪を経てプレーが進化。快速両ハンドドライブにクレバーさが加わり、プレーの幅も広がった。
早田はこれまで団体、ダブルスには出場経験があるものの、シングルスは満を持しての初出場。9月のWTTで優勝、その後のアジア選手権では三冠と成長を見せており、勢いもある。持ち味の爆発力で大躍進の可能性もある。早田は女子唯一、3種目に出場することとなるが「アジア選手権で3種目を戦うために体力切れを起こさないよう、無駄な力を使わずに強いボールが打てるかどうか強化してきた」と対策も講じているという。芝田も現在は世界ランキングを落としているが、過去には同13位までランキングを上げた実力者。安定感と威力を兼ね備えた両ハンド、ガッツあふれるプレーで世界の強者に果敢に挑む。
その日本代表のメダル獲得に立ちはだかるのは中国だが、陳夢、孫穎莎、王曼昱の「ビッグ3」は強力。東京五輪で金メダリストとなった陳夢は心・技・体・智、すべてで成熟期を迎えており、五輪でのタイトル獲得で選手として一段高みに登った感がある。世界選手権を制すると、五輪、ワールドカップ、グランドファイナルと4大タイトルすべてを獲得したこととなり「大満貫」達成となる。
東京五輪銀メダルの孫穎莎も躍動感のあるドライブ連打と高い戦術遂行能力で、当然表彰台のテッペンを目指す。現在世界ランキング2位の孫穎莎だが、東京五輪決勝でも敗れるなど陳夢には相性が悪い。2人は決勝まで対戦しないドローとなるが、孫穎莎にとっては最後に最も高いハードルが待つこととなる。前回大会でも3位に入賞している王曼昱は9月の全中国運動会で陳夢、孫穎莎と五輪金・銀メダリストを連破して優勝。東京五輪ではリザーブから団体戦へ出場したが、パリ五輪に向けて今大会で大きくアピールしたところだ。
3人の他には陳幸同、王芸迪が中国代表の選ばれたが、ともに初の世界選手権出場。これまでもワールドツアーでコンスタントに成績を残しており、日本選手もたびたび敗戦を喫してる。ビッグ3とて、同士討ちとなれば手強い相手になることは間違いない。
日本、中国以外にもアジア勢が上位をうかがう。韓国はエースの田志希の他、17歳の申裕斌に注目。東京五輪ではポテンシャルの高さを披露し、その後のアジア選手権でも準優勝。韓国希望の星はどこまで勝ち上がるのか。東京五輪団体銅メダルの香港は杜凱琹が前回のベスト8越えを狙う。東京五輪でも陳夢に肉薄しており、日本勢にとっても警戒すべき相手だ。また、2018年の団体戦で丁寧(中国)を破り、東京五輪団体戦銅メダル決定戦では2得点をあげた蘇慧音もビッグゲームに強く侮れない。
ヨーロッパ勢ではハン・インとシャン・シャオナ、国際大会での実績も豊富なドイツのベテラン帰化選手コンビがITTF(国際卓球連盟)が定める帰化選手規定の年数をクリアして世界選手権に初めて出場。ヨーロッパ生まれの選手でアジア勢に対抗できそうなのはP.ゾルヤ(ドイツ)など少数だが、ダークホースの登場に期待したい。
世界卓球選手権(個人戦)ヒューストン大会直前ガイド「ヒューストンは燃えているか?」を、11月20日発売の卓球王国2022年1月号で掲載。こちらもあわせてご覧下さい。
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