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インターハイ2023

圧倒的な熱量と個性。20大会連続20回目の夏に躍動した明豊ボーイたち

まさに圧倒的な熱量と個性だった。今どき高校野球でもそうは見ないような、青々とした坊主頭の明豊軍団が、この北海道インターハイを大いに盛り上げてくれた。

天衣無縫のオールラウンダー、強烈な両ハンドドライブにブツ切りバックカットを織り交ぜるキャプテン木塚陽斗。観客席に見せつけるパフォーマンスと、生徒会長らしい勤勉な守備が同居する明豊のクローザー、高橋拓己。名前は空と書いて「あおい」、木塚とのダブルスでは渾身のフォアドライブを振り抜いて相手ペアの守備を粉砕した岡田空。そして「ヤンチャ」なプレーに粘り強さが加わってきたレギュラー唯一の2年生、眉目秀麗な植木大陽。

立ちすぎるほど、キャラが立っている。そして会場中、至る所に顔を出しては、いろいろなチームの選手たちとコミュニケーションを取る。学校対抗決勝の観客席では、同じ九州ブロックのチームや、その他の強豪校の選手たちが揃って明豊に声援を送る。「陽」や「空」など、空にまつわる名前が多い明豊の選手たち。彼らが醸し出すポジティブな空気が、コロナ禍を乗り越えたインターハイの空気を明るくしてくれた。

明豊の女子チームや父兄だけでなく、様々なチームを巻き込んだ明豊応援団は大迫力だった

「1番の木塚のところで本来は流れを引っ張ってくるんですけど、2−0のリードから逆転されて、ちょっと雰囲気が良くなくなった。いつもの木塚らしくない部分で、プレッシャーがあったんでしょうね。自分が2点取るという思いがあったので、頭をよぎったんじゃないかと思います」。男子学校対抗の決勝終了後、ベンチに入った藤本賢司監督はエース木塚のプレッシャーを思いやった。
「2番の植木はまだ雑な部分があるけれど、もっとプレーが丸みを帯びて戦術転換の能力がついてくれば、エースとして頑張ってくれるんじゃないかと思います。伸びしろは十分にありますね」(藤本監督)

常に2点取りの活躍で、明豊のエースとしての存在感を見せたキャプテン木塚

まだ課題はあるものの、今大会確かな成長を証明した2年生の植木

「3番のダブルスは、相手ペアに緩いボールをたくさん使われて、コースも1点に集められて動きが止まってしまった。昨日勝っているという相手ペアの気持ちの余裕もあったでしょう。やっぱり上手(うわて)ですね」(藤本監督)

3番ダブルスはストレートで敗れたが、木塚(左)/岡田ペアは最後まで名電ペアに食い下がった

チームの守護神・高橋(左)は出場はならなかったが、ベンチで懸命に声援を送った

トップで惜敗した木塚は、決勝後に「坂井とは結構試合をやっているけど、一度も勝ったことがなかった。負けてしまったけれど、明豊にとって初めての決勝だったので、今回の2位は大きいと思います」と語ってくれた。

今大会が20大会連続20回目の出場だった明豊。その連続出場の表彰状を、大会初日の開会式で受け取ったのはキャプテンの木塚だった。「今年は節目の年だったので、決勝まで来られたのは藤本監督に少しでも恩返しができたかなと思います」。

準優勝の表彰状を笑顔で受け取る木塚。左は藤本監督

フォアのカウンターと中陣バックドライブの切れ味は素晴らしいものがある木塚。シングルスはベスト16で大会を終えたが、名電と野田が上位を占めるジュニア男子で、常に注目選手のひとりだ。
「下がりすぎると絶対勝てないので、これから前・中陣でカットと攻撃のバランスを考えていきたい。今はまだ成長過程なので、これから1球1球の判断を磨いていって、ミスが少なくなればたぶん負けないと思います。そういう卓球で、次こそは日本一を目指します」(木塚)

木塚の父は済美高女子卓球部の木塚健一監督、姉は神戸松蔭女子学院大の主力選手である木塚陽菜。「お父さんがカットマンで、お母さんとお姉ちゃんが攻撃型だったんですけど、戦型は軽く『まあカットでいいか』という感じで、早めにカットマンに決めました。でも練習ではカットはしたくないのでずっと打っていたら、こうなりました」と笑う木塚。両面裏ソフトで、カットを交えた今までにないオールラウンドスタイルを築いていってほしい。

20大会連続20回目の節目の年に、新たな歴史を築いた明豊ボーイズ

男子学校対抗の殊勲賞は萩原啓至(左)、敢闘賞は木塚陽斗。チームメイトに記念の盾を見せるふたり。戦いを終え、両チームの雰囲気は明るかった

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