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世界卓球2022

歓喜に沸いたルクセンブルクとプエルトリコ。伝統なき小国を変えたものは?

大会1日目の13時から行われた女子予選グループ4の第1戦、韓国対ルクセンブルクは熱戦となった。世界チームランキング4位でグループの最上位国である韓国に対し、ルクセンブルクはシンガポール、タイに次ぐ4番目。若手のホープ・申裕斌が故障の影響で世界代表から外れた韓国だが、トップ李ジオンが幸先よく勝利を収め、主導権を握ったかに思われた。

しかし、韓国の前に立ちはだかったのは「奇跡の59歳」倪夏蓮だ。韓国卓球協会の柳承敏会長や金擇洙・専務理事などが観客席から声援を送る中、ロングサービスからミドルにパワードライブを叩き込む田志希の猛攻をしのぎ切り、歓喜のジャンプ!

倪夏蓮、田志希を破って歓喜のジャンプ

さらに3番では、世界ランキング299位のゴンデリンガーが勇気を振り絞り、フォアの連続ドライブとバックのミート打ちで攻め続け、世界ランキング74位の金河英を破る金星を挙げる。ゲーム終盤の競り合いの中でも気力を振り絞り、声を出して戦ったゴンデリンガーに勇気を与えたのは、フォアに飛ばされたボールにも必死に飛びつく倪夏蓮のプレーだろう。

3番ゴンデリンガーの勝利の瞬間。ナーバスな接戦を制した

若手の奮闘で2ー1とリードし、回ってきた4番。これで倪夏蓮が燃えないわけがない。長いリーチから多彩なコースにドライブを打ち分ける李ジオンの攻撃を何本もブロックし、チャンスボールは積極的に攻め、最終ゲームは一気にリードを広げて勝利。2番で見せた歓喜とは対照的に、静かに何度も拳を振り、勝利の味を噛みしめていた。ベンチに戻り、歓喜の輪を広げたルクセンブルクチーム。59歳のエースがチームにもたらした、特別な力を見た。

チームに勝利をもたらした倪夏蓮。ベンチに入った夫、トミー・ダニエルソン監督に感謝の思いを伝えた

一方、韓国は淑徳大女子卓球部を常勝軍団に育てあげた呉光憲監督が初の世界団体デビュー。その初戦はほろ苦いものとなったが、グループは混戦模様で、韓国が逆転で1位通過するチャンスは十分にある。卓球に限りない情熱を注ぐ呉監督の、ここからの巻き返しにも注目だ。

韓国女子の呉光憲監督は初の世界団体のベンチ。日本では女子ジュニアナショナルチームの監督も務めた

そして日本女子がスロバキアを退けた夜19時からの試合、メインアリーナの一角でもうひとつの熱戦が展開されていた。女子予選グループ1位のプエルトリコ対マレーシアだ。

プエルトリコは世界ランキング11位のスーパーエース、アドリアナ・ディアスと姉のメラニー・ディアス、そしてダニエリー・リオスという顔ぶれ。編集部タローが取材した2013年の世界ジュニア選手権モロッコ大会でも、この3人がプエルトリコ代表で出場していた。今大会、プエルトリコ男女チームのベンチに入るディアス姉妹の父、ブラディミル・ディアスが娘たちを指導し、日本や中国に積極的に武者修行に行かせて鍛えてきた。

マレーシア戦はA.ディアスの2勝でラストにもつれ込み、リオスがゲームオールで勝利を収めた。かつてはフォアの強打に威力はあるものの、守備力に難があり、競った試合でなかなか勝ちきれなかったが、マレーシア戦ラストでは粘り強いバックの緩急も見せ、成長の跡を感じさせた。最強軍団・中国と同じグループではあるが、プエルトリコも決勝トーナメント進出は十分にチャンスありだ。

マレーシア戦の5番ラストでリオス(奥)が勝利した瞬間

歓喜のプエルトリコチーム。左端のブラディミル・ディアス監督には……帽子を取ってもらえば良かったですね

 

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