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世界卓球2022

中国を追い詰めた日本男子。日本の若者よ、「中国に勝ってやる」という意志を持て

昨夜の日本男子と中国男子の大激戦。フロアに1台きりのコートサイドで、ラスト戸上隼輔がカミソリ強打を連発して1ゲーム目の9ー4でリードした時、重い歴史の扉は確かに動きかけた。砂ぼこりがあがり、うっすらと光が差すくらいの気配はあった。

ベンチで何度も深呼吸をして、自らを落ち着かせようとする王楚欽。なりふり構わず、「加油(頑張れ)! 王楚欽!!」の大声援を連呼する中国チーム。4番の張本智和対樊振東戦では、後列で腕組みをして試合を眺めていた樊振東の担当コーチ・王皓(09年世界チャンピオン)が、いつしか最前列で身を乗り出し、食い入るように試合を見つめていた。中国ベンチの選手たちは1本ごとに立ち上がり、まるでインターハイのように仲間を鼓舞する。

準決勝ラストの1ゲーム目のタイムアウト。ベンチで深呼吸を繰り返していた王楚欽

いつの間にか応援団席の最前列にいた王皓。教え子の樊振東の試合を見守る

「最強軍団」という仮面を投げ捨て、喜怒哀楽を前面に出して戦う中国の姿がそこにはあった。ミックスゾーンで取材に応える馬龍、樊振東、王楚欽の表情から感じられたのは、安堵感だけでなく、高揚感や充実感。卓球界を覆う中国に対する恐れ、畏怖、萎縮、コンプレックス。日本の張本智和、戸上隼輔、及川瑞基はその重く淀んだ霧を突き抜け、同じ土俵に立っていた。

3番馬龍を応援する中国ベンチ。馬龍が1本取るごとに立ち上がって応援

日本男子の田勢邦史監督は、「中国戦に出た3選手は、最後まで『中国に勝つ』『絶対勝ってやる』という気持ちを持ち続けていた。よくその気持ちを持ち続けてくれたなと思います」と語る。

「中国に本気で勝とうとか、勝ってやるという気持ちがやっぱり大事なんです。相手は五輪チャンピオンや世界チャンピオン。自信を持って戦えと言ったって無理だし、挑んでみても何度も何度も負けると思う。それでもあきらめずに中国に立ち向かっていくこと、挑戦していく気持ちが大事。

日本の若い選手たちには、『今度は自分たちが中国を倒してやる』という強い気持ちを持ち続けてほしい。もちろん技術面の課題はいろいろありますが、大舞台で最後に違いを生み出すのは気持ちやメンタルなんです。今大会の日本男子は、『中国に勝てるチームはもしかしたら日本かもしれない』という可能性を示してくれた。だから我々も中国に勝つためには挑戦し続けたいし、日本の若い選手たちにも頑張ってもらいたい」(田勢邦史監督)

3番及川は、馬龍をゲームカウント1ー1の3ゲーム目、4ー1でリード。「今回の3人では馬龍が一番やりやすかったし、次はチャンスがあると思う」と試合後に語った

中国へ挑み続けるメンタリティと同時に、田勢監督が重要だと語るのは「空気を変える一本」を持つこと。世界のトップ選手で言えば、張本智和には一撃で相手ベンチを沈黙させる、強烈なバックハンド強打があるし、東京五輪金メダリストの馬龍は34歳という年齢でありながら、一撃必殺のフォアのパワードライブは健在だ。

一撃でコートの雰囲気を変える張本智和のバックハンド

「中国に勝つ」という断固たる決意と、試合の流れをつかみ、引き寄せるための絶対的な武器。有望株が揃う日本の若手選手たちに、その「心」と「技」、そして中国にパワーで打ち負けない「体」が備われば、中国に勝てる日は必ず来る。さあ、今日から。スタートラインには誰だって立てる。

ラストで王楚欽に敗れた戸上に語りかける田勢監督。何度敗れても挑み続ける姿勢が重要だと説く

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