元全日本男子監督の倉嶋洋介氏が男子の4試合を見て、感想を卓球王国に寄せてくれた。
吉村はリスクのある戦い方を挑んだが、松島は落ち着いていた。成長を感じさせる一戦
●男子シングルス準々決勝
松島輝空(木下グループ) -11、10、12、11、6 吉村真晴(SCOグループ)
「吉村がリスクを負ってプレーを仕掛けてきた。バックハンドはブロックではなくカウンターを狙い、松島にプレッシャーをかけていく。大舞台の強さがあった。それによって松島の心理的なブレが出るかと思ったが、松島の心は揺れなかった。決められたらしょうがない、というような割り切りが前半には見られ、非常に落ち着いていた。
松島はこの1年間、全日本チャンピオンとして戦い、オリンピックでメダルを狙うという明確な目標を持っている。そのため、自信と覚悟が見受けられる。初戦の戦い方を見て、『今回は違う』と感じた。
松島は1回戦からの戦いぶりを見ると、心と技術が非常に良い状態にあるように見えた。落としているゲームも少なく、準々決勝まで隙のない戦い方を見せた。
一方の吉村も、大舞台に強いベテランらしいプレーを披露した。吉村らしいボールの狙い方、リスクを背負ったプレーがあり、それをしなければ松島には勝てないという強い決意があったのだろう」

試合の出だしから松島を攻め立てた吉村

戦い終えた松島
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谷垣の驚異的なバックハンドと、高校1年・川上の試合ぶり
●男子シングルス準々決勝
谷垣佑真(愛知工業大) 3、-11、-5、10、11、9 川上流星(星槎国際高横浜)
「谷垣が1-2とゲームをリードされながらも、4ゲーム目、5ゲーム目の競り合いをものにしたことが大きなポイントとなった。谷垣はラリーになったときの攻撃力が高く、特に驚異的なバックハンドに対して、川上がフォアハンドで勝負できるかが重要だった。
川上の良さは、一撃で打ち抜くチキータレシーブだが、試合後半ではそれをさせてもらえなかった。つまり、谷垣のサービスの配球がうまかったということだ。谷垣はこの試合で、素晴らしい才能を見せてくれた。
川上は大会前に、ジュニアとシニアの両方で優勝を狙うと公言しており、大きな期待感があった。歴代のメダリストは高校生で全日本チャンピオンになっている例も多く、ロス五輪を目指すことも含めて、当然ながら重要なプロセスとなる。
『ああ、負けた』という感覚よりも、ひとつの試合で人生が変わることもある。惜しいという試合は存在しない。勝てる試合を、しっかりと勝っていくことが大事だ」

激戦を制した谷垣

高校1年ながら一般での優勝を期待させた川上
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●男子シングルス準々決勝
篠塚大登(愛知工業大) 4、-6、9、9、-6、11 宇田幸矢(協和キリン)
篠塚は宇田のフォアを封じる戦術で、バックで勝負をかけた
「昨年と同じカードとなったが、篠塚は威力のある宇田のフォアハンドを振らせないという戦術の意図を感じさせた。フォアを封じるために、早いタイミングで宇田のバックに持っていく展開もあり、それを宇田もフォアで狙うのだが、篠塚はバックハンドのストレートをうまく織り交ぜていった。その篠塚の戦術によって、宇田の良さは半減していた。バック対バックのラリーが多くなれば、篠塚の展開になる。宇田が押して、篠塚を台から下げるという展開が多くならないと、勝機は見いだせなかった」

最低でもベスト4入りを狙っていた宇田は悔しい敗退だった

宇田に対してバックハンドで勝負をかけた篠塚
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●男子シングルス準々決勝
張本智和(トヨタ自動車) 4、-8、-10、7、9、-8、8 木造勇人(関西卓球アカデミー)
超高速ラリーでの張本の攻守のバランスが、木造のハイリスクプレーをはねのけた
「張本対木造の試合は超高速ラリーとなり、その速いラリーの中で張本は攻守のバランスが光っていた。木造は速い展開の中で自分が攻め切れるときは良いのだが、守りに回ったときに点が取れなかった。ただ、この日は木造のバックハンドのカウンターが素晴らしかった。そこでリスクを負いながらの展開に持っていきたかったが、張本は高速ラリーの中でしっかり守り、それが緩急のあるボールを生み出すことになり、木造がミスをする場面もあった。
お互いに回転量やコースの変化をつけた緻密なサービスを出し合い、駆け引きがあった。この二人でなければ、ここまでの高速ラリーにはならないだろう。木造もハイリスクな攻撃を仕掛けなければ、張本の固い壁を打ち破れない。木造が取ったゲームは9本、10本といった終盤で、相手に打たせてカウンターを狙う、あるいは思い切りの良いフォア攻撃を仕掛けたことで、張本を追い詰めたのだろう」

果敢な攻撃で張本を追い詰めた木造

勝利後、観客の声援に応える張本

中国から駆けつけた張本応援団

元全日本男子監督、五輪メダリスト監督の倉嶋洋介氏
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