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世界卓球2026

『TTR』の功罪。戦略的な使い方と、サービスフォルトの急増

前回の世界卓球ドーハ大会(個人戦)から、本格的に取り入れられたビデオ判定システム『TTR(Table Tennis Review)』。選手には2回のリクエストの権利があり、審判にリクエストして成功なら権利はそのまま、失敗すると権利がひとつ減る。

今大会でも「一度も使われない試合は珍しいのでは?」と思われるほど、頻繁に使われているTTR。1ゲーム目のラブオールで、いきなり「相手のサービスのトスが斜め」とTTRをリクエストして相手にプレッシャーをかけたり、劣勢に陥った場面で、「流れを切るために使っている?」というTTRもしばしば見られる。

また、TTRでの検証が可能になったことで、審判も選手のサービスに対して早い段階からフォルトを取っていくケースが増えた。1回目は警告で済むケースもあれば、いきなりフォルトを取られることもある。

TTRでの検証を行う審判

日本男子対ドイツ戦では、1番の張本智和対ドゥダ戦で、張本のサービスが「トスが斜め」だといきなりフォルト。張本はTTRをリクエストし、トスの角度は23.65度と、ルールで規定された30度以内に収まっていた。フォルトの判定をTTRで検証し、20度台前半だったのを見たのは初めてだ。

サービスフォルトの判定に、TTRをリクエストする張本

結果は23.65度。完全にセーフだった

このTTRから、張本は一時3-4と逆転された。試合に大きな影響を与えうる場面だった。少なくとも、最初は警告で良かったはずだ。

さらに3番の戸上隼輔対フランチスカ戦では、「フランチスカのサービスが隠れている」と2回フォルトを取られ、TTRでは2回とも「セーフ」。フランチスカも「2回もだぞ!」と審判に食ってかかっていた。

審判に詰め寄るフランチスカ

また、選手が対戦相手にTTRをリクエストした場合、失敗すると自分の失点になる。しかし、審判がフォルトをとってTTRでセーフだった場合、審判がラリーを止めてしまうので、相手がレシーブミスをしていてもサービスはやり直しになる。これは選手も納得がいかないだろう。

テニスでのビデオ検証は、「打球がインか、アウトか」で使われるケースがほとんど。卓球も「エッジか、サイドか」の判定に使われるケースが多いのでは、と感じていたTTRだが、圧倒的にサービス関連の判定に使われているのが現状だ。

台数が多いステージ1Bや、ウェンブリー・アリーナでも4台設置時には第3・第4コートにはTTRは導入されないなど、競技条件の面でも不平等な部分は否めないTTR。

特にサービスについては、多くの選手が違反にならないギリギリの「グレーゾーン」の範囲内で、質の高いサービスを出そうとする。ルールが現状のままだと、TTRを巡るさまざまなトラブルは解消されないだろう。

選手が「トスが斜め」だとフォルトを取られ、TTRで検証するとまさかの40度オーバー。ベンチは思わず苦笑い、というシーン

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