中国一強時代は終わりか!? 一般の方にはあまり知られていないかもしれないが、現在の世界卓球界は男子の勢力図が凄まじく拮抗している。
現在ロンドンで開催されている世界選手権。日本ではメディア露出の多さから女子に注目が集まりがちだが、卓球ファンが真に固唾を呑んで見守っているのは、実は男子の動向なのだ。女子は中国と日本が突出しており、ファンの関心は「決勝で日本がどこまで中国を追い詰められるか」に集約される。しかし男子においては、グループリーグで優勝候補の中国と日本がともに2敗を喫するという、大波乱が起きている。
もっとも、上位8チームは大会前から決勝トーナメント(第2ステージ)進出が確約されていたため、エースを温存するなど、従来の「世界戦」とは異なる戦略をとるチームも見受けられた。 振り返れば、4月6日にドイツ卓球連盟のヴォルフガング・デルナー会長が、国際卓球連盟(ITTF)へ一通の意見書を提出していた。
【ドイツ卓球連盟(DTTB)意見書 要旨】
1. 予選段階からのトップチーム同士の激突
ロンドン大会より世界選手権のシステムが変更され、男女各64協会へと拡大された。4月28日から5月1日にかけてカッパー・ボックス・アリーナで「カテゴリー2」の56チームがステージ1Bを戦い、本戦(決勝トーナメント)への24枠を争う。最終段階となるステージ2は、5月4日からOVOアリーナ・ウェンブリーにて、計32チームによるノックアウト方式で行われる。
このステージ2に進む32チームのうち、8枠は自動的に出場権を与えられたシードチームである。しかし、今大会は従来の慣例とは異なり、世界ランキング1位から7位までのチームに開催国イングランドを加えた計8チームが、5月2日・3日の「ステージ1A(予選段階)」で直接対決を行う。通常なら世界ランキングで決まる「本戦のシード順」を、このステージの対戦結果のみで決定するという方式だ。
2. 新システムに対する懸念事項
ドイツ卓球連盟は、現場のフィードバックに基づき、ペトラ・ゾーリングITTF会長へ以下の批判点をまとめた。
●選手の負荷管理と選手層の活用における課題
トップチームが予選からフル稼働を強いられることはコンディション管理を困難にし、若手有望株に経験を積ませる機会を奪う。
●大会期間の長期化
過密な国際スケジュールの中で、拘束期間がさらに延びることは選手への負担が大きい。
●競技のドラマ性とストーリー性の欠如
強豪同士が早い段階で対戦し尽くすことは、ノックアウト方式に向けて高まっていくはずの緊張感を損なう。伝統的な世界選手権の魅力を阻害する要因となりかねない。
●スポーツとしての公平性への疑念
「負けても本戦に進める」状況下では、戦術的に全力を出さないチームが現れる危険がある。これは試合のインテンシティ(強度)や結果の妥当性、ひいては競技の公平性を揺るがす。
●戦略的な操作を招くリスク
例えば、ランキング最上位国が予選であえて主力を温存し、最下位で通過したとする。すると、決勝トーナメント1回戦で「本来対戦するはずのない他グループの1位(強豪)」と意図的に激突するようなコントロールが可能になってしまう。
以上がドイツ連盟の意見書の内容だが、実際に蓋を開けてみれば、懸念が的中した部分もあれば、杞憂に終わった部分もある。
ただ現実として、グループリーグでベストオーダーを組まない国がある一方で、日本男子のように初戦から一切の妥協なくベストメンバーで挑んだチームもあった。
中国や日本が敗戦した理由を、この試合方式のせいだけに帰することはできない。条件は全チーム同一だからだ。結果を分けたのは、この特殊な流れに「乗れたか、乗れなかったか」という適応力の差だろう。
ドイツ連盟が批判した「ストーリー性の欠如」は、確かに一理ある。しかし、もしITTFやテレビ局が「序盤から好カードを連発させ、予測不能な展開を作る」ことを狙っていたのだとすれば、その目論見は見事に成功したとも言える。
いずれにせよ、誰もが想定していなかった組み合わせで男子第2ステージは幕を開ける。本当の戦いは、ここからだ。
PHOTO Remy Gros
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