●女子シングルス1回戦
松平志穂(サンリツ) −7、14、−8、7、9 吉井亜紀(同志社大)
大会2日目の女子シングルス1回戦、今回の全日本での現役引退を表明している松平志穂(サンリツ)が登場。両ハンドから回転量の多い、重いドライブを繰り出す吉井との一戦は大激戦になった。何度もゲームポイントを取られた2ゲーム目、必死で相手のボールに食らいついて16−14で奪取。最終ゲームも9−9からの2本連取で苦心の勝利だった。
右のアキレス腱を傷め、実戦は10月末の全日本社会人以来という松平。「2カ月ほどケガで思うような練習ができなかった。1月初めから練習を再開して、何とか全日本という舞台に間に合って良かったです。試合勘は戻っていなかったと思うんですけど、結局最後は技術ではなくて気持ちの勝負。泥臭いプレーだったと思うんですけど、ラリーで相手より1本でも多く取れればいいと思っていました」(松平)。
2012年全日本ジュニア優勝、2013年世界選手権パリ大会代表として同世代のトップを走ってきた松平。昨年の全日本でも引退の二文字は頭にあったというが、「卓球をやらせてくれた両親に、引退についてちゃんと伝えてから決断したかった」ともう1年プレーを続行した。この1年はケガも多く、納得のいく結果は出せなかったというが、ようやくたどり着いた全日本の舞台だった。
「両親には昨年の3月、全日本選手権が終わってちょっとしてから引退することを伝えました。今大会は『自分らしいプレーをすれば大丈夫』と言っていましたけど、もう泣きそうらしいです(笑)」(松平)
続いて男子シングルス1回戦に登場した兄・健太によれば、父・清志さんと母・道代さんは大会3日目から会場に来るという。「来る前に負けていたらヤバかったので、良かったです」と笑った健太だが、妹曰く「意外と陰で応援してくれるタイプ」なのだとか。次兄・賢二からも「気負わずに、最後とは思わずに自分のプレーをすればいい」とアドバイスをもらったという。
「家族は1月3日まで避難所にいて、今は家に戻っていますが、断水が4月くらいまで続くと聞いて、生活は大変だと思います。私のこの1勝は、被災者の方にそこまで大きな影響はないかもしれません。それでも地元に良い知らせを届けることが私の義務というか、良い知らせをいっぱい届けたいと思います」(松平)
兄・健太も「ぼくたちスポーツ選手はこういう全日本などの舞台で結果を出すことによって、周りを勇気づけられる部分が大きいと思う。地震の後、モチベーションでは少し難しさがありましたが、この全日本でやれるところまでやり切ると気持ちを切り替えました」と語る。故郷への思いをボールに乗せて、松平きょうだいの挑戦が始まった。
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