混合ダブルスでベスト8進出を決めた松平賢二/永尾尭子(協和キリン/サンリツ)ペア。ふたりでペアを組むのは初めてというが、松平は2012年度大会で若宮三紗子とのペアで混合ダブルス優勝、永尾は2017年度大会で平田有貴とのペアで女子ダブルス優勝、ともに全日本のダブルスタイトルホルダーだ。
しかし、ふたりのペアはどこか初々しく、どこか危なっかしい。3回戦で鈴木/面田(愛知工業大)に3ー1、4回戦で宮本/首藤(専修大/日本大)に3ー1。いずれの試合も中盤でリードされる場面は少なからずあった。
しかし、ラリー戦になれば松平がコートのどこからでも回転量の多いフォアドライブを打ち込み、台上ではフェイクを入れた二段階フリックで相手ペアを惑わせる。一方、永尾はブツ切りのフォアサービスでサービスエースを連発し、圧巻のカウンターとシュートドライブで相手ペアの男子選手をあっと言わせる。
「後ろでしっかりかけ返してくれるので、ある程度(返球が)あまくなっても大丈夫かなって(笑)。信じてるってことで」とパートナーへの信頼感を語ってくれたのは永尾。すかさず「ことでってことは、信じてないってこと?」とケンジが混ぜっ返せば、「信じてます、信じてます」と笑いを隠せないタカコ。大会4日目の最終試合を戦い終え、練れた夫婦漫才のような掛け合いと笑いがミックスゾーンに響いた。
明日の大会5日目はシングルス4・5・6回戦と3ラウンドが進む「決戦の金曜日」、あるいは「ブラック・フライデー」。その翌日、1月27日(土)に混合ダブルスの準々決勝が行われる。「ここまで来たらね、行けるところまで行きたいよね、先は考えずに。一戦ずつ大事なので、しっかり頑張りたいです」(賢二)。「……同じです(笑)」(永尾)。
「私もミックスで全日本に出るのは2回目なんですけど、賢二さんと組ませていただいているので、チャンスはあると信じて……」(永尾)「……信じてない?」(賢二)。「……(笑)信じてます、信じてます」(永尾)。ネットを挟んだストップ対ストップの攻防のごとく、ボケて乗せて、ツッコんで外してと変幻自在だ。
ベンチでふたりを見守ったのは、今日の女子ダブルス4回戦に永尾とのペアで出場し、全日本での戦いを終えた松平志穂。「ケンジ兄ちゃん」は、「志穂のぶんもミックスはしっかりやりたいですし、両親も見に来てくれているし、能登半島地震の被災地にも少しでも良い報告ができるように頑張りたい」と語った。
「ダブルスは最後自分のミスで終わってしまった。申し訳ない部分もあるし、もう少しダブルスをやりたかったですね」と語ったのは永尾。「(志穂が)ミックスのベンチに入ってくれるので、最後まで、できるだけ長く、一緒に戦おうと言いました」(永尾)。一枚のフェンスを隔てても、コートの中からベンチに場所を移しても。観客席で見守る両親、優しい兄とダブルスパートナーとともに、松平志穂の全日本はもう少し続いていく。
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