日本女子が3−0で勝利した準決勝の香港戦、トップに起用された張本美和。「ABC-XYZ」のスウェイスリング方式の団体戦で、オーダー交換時のコイントスで香港がABC、日本がXYZに決定。以下のようなオーダーとなった。
〈日本 vs. 香港〉
1番 (X)張本美和 vs. (A)杜凱琹
2番 (Y)早田ひな vs. (B)朱成竹
3番 (Z)平野美宇 vs. (C)李皓晴
4番 (Y)早田ひな vs. (A)杜凱琹
5番 (X)張本美和 vs. (B)朱成竹
トップに張本が出場したのは、早田をエースとして(Y)で起用したためだ。昨日の男子準々決勝で、松島輝空を(X)で起用し、相手エースの(A)樊振東とトップで当たったのと同じパターンだ。XYZではエースの選手を(X)で起用してしまうと、1番で出た後に5番まで出番が来ない。4番までに試合が決まってしまったら元も子もないので、エースは(Y)で使うケースがほとんどになる。
この「ABC−XYZ」の試合方式では、前半で互いのエースが1点ずつ取り、1−1になるケースも多い。1番で相手エースの杜凱琹を破り、2番につないだ張本美和は、この香港戦で最も大きな役割を果たしたと言える。
「今日は会場に慣れるのがすごく遅かったし、1・2ゲーム目は自分のやりたい戦術も定まっていなくて、サービスも台から出ることが多かった。もしかしたらこの流れのまま行ってしまうかもしれない、という気持ちもありました」。試合後の囲み取材で、張本はそう語った。
「それでも『やれるところまでやる』という、絶対にあきらめない気持ちがあったので、3ゲーム目からは少しゆっくりとしたペースでやることができた。1・2ゲーム目はサービスが出てしまうことが多かったんですけど、3ゲーム目からは台から出てもいいから、フォア前だったり、バックへのいろいろなサービスだったり、いつも自分がしているプレーをもう一回丁寧にやっていった。それが効いたのが良かったと思います」(張本)
張本自身も語るように、1・2ゲーム目と3ゲーム目以降では彼女は別人のようだった。経験も実績もある杜凱琹でさえ、本来の姿を取り戻した張本には歯が立たなかった。リスキーな5ゲームズマッチで見せた恐るべき修正能力。改めて張本美和の未曾有のポテンシャルを見せつけられた。決勝前にこの苦しい一戦を乗り越えたことは大きな意味を持つ。
試合後のミックスゾーンで決勝に進出した感想を尋ねられ、張本美和はこう語っている。
「初めての世界卓球でここまで来られるとは思っていなかった。団体戦ということでチームの先輩方に助けていただいた。目指す場所は最初から優勝なので、明日の決勝は誰が出るか分からないんですけど、チーム一丸となって最後まで戦えたらいいと思います」(張本)
「目指す場所は最初から優勝」。最強軍団・中国との決勝を前にしても、当たり前のことを当たり前に言い切った張本美和。2014年東京大会からの4大会の決勝での「日中決戦」で、日本選手が勝利を挙げたのは、18年ハルムスタッド大会のトップで劉詩ウェンにマッチポイントを取られながら逆転勝ちした伊藤美誠のみ。まだ中国の団体代表メンバー5名から勝利を挙げたことはないという張本だが、明日は何かやってくれそうな予感がある。
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