卓球王国 2024年11月21日 発売
バックナンバー 定期購読のお申し込み
インターハイ2023

一生懸命、少しでも長くコートに。高校3年で初全国個人戦・岡崎光花のインターハイ

 いよいよ大会最終日を迎える北海道インターハイ。大会前、今回のインターハイに出場する選手のお母様から一通の読者ハガキをいただいた。

 内容は「中学から卓球を始めた娘が、高校3年生のインターハイで初めて全国大会の個人戦に出場します」というもの。ハガキを読んで、実際に会場でその選手の試合を見ていたら、なんというか、すごく一生懸命に、それでいて楽しそうに試合をする姿が印象的だったので、試合後に話を聞いてみた。

 

 まず、「その選手」とは兵庫・葺合の岡崎光花。お母様からの読者ハガキをもとにプロフィールを紹介すると、卓球を始めたきっかけは、小学生の頃に祖母と台所のテーブルで卓球をして遊んでいたこと。それが楽しくて興味を持ち、「中学からは部活動で本格的に卓球を」と思っていたものの、進学した中学の卓球部はその年度は新入生は入部できなかったそうで、校長先生に直談判。その結果、中学の卓球部に入部することができ、本格的に卓球を始めたという。

 その後、部活だけでなくクラブにも入会して卓球に打ち込んだものの、中学時代は県大会に1度出たきり。それでも卓球未経験のお父様が必死に卓球を勉強してアドバイスを送り、岡崎も努力を続けて、今年の春の選抜には学校対抗で全国の舞台に立っている。そして高校最後のインターハイでは見事、シングルスの代表となり、北海道で初の個人戦全国大会出場を果たした。

 そうして迎えたインターハイ、岡崎の女子シングルス1回戦の相手は昨年の愛媛県インターハイ予選で優勝した実力者・山藤結夢(松山東雲)。少し緊張の色も見えて1ゲーム目を落とした岡崎だったが、2ゲーム目は練習を重ねてきたというサービスと、バックに貼った変化系表ソフトを駆使してジュースで奪取。3・4ゲーム目も食らいついていったが最後は押し切られて1-3で敗れた。以下は試合直後のコメント。

 

-初めてのインターハイ、どうでしたか?

岡崎:正直、試合を見ていてめちゃめちゃ強い人ばっかりで、「私の実力、この中やったら下から数えたほうが早いやろな」って思ってました(笑)。すごい緊張しながら準備してきたけど、実際にやってみたら良い勝負になったし、勝てなかったけど1ゲーム取ることができて、それでちょっとでも長くコートに立てて良かったなと思います。

 中学スタートだったんで、いろんな人にたくさんお世話になってインターハイに出ることができたと思ってます。だから、「成長できたよ」ということを少しでも長くコートで試合をして伝えたかったので良かったです。

 

-このインターハイが初めての個人戦全国大会なんですよね?

岡崎:3月の高校選抜には出られたけど、個人戦では初めてです。中学の時は区大会で勝つのがやっとで、県大会に行けたのも1回だけでした。高校ではそこから頑張って県大会には行けるようになったけど、今まで全国には出てないです。

 

ー今の時代だと、中学から卓球を始めてインターハイに出る選手って少ないのかもしれません。その中で工夫してきたこととかってありますか?

岡崎:父が動画とか専門誌とかでいろいろ研究してくれて「こういうのやってみたら」ってアドバイスしてくれました。「身体操法」っていうのがあって、無駄のない打ち方にフォームを直したり、サービスで優位に立つためにサービス練習をたくさんしたり、バックを高校から変化表にしたり、人と違う方向性で勝つためのアイデアを考えてきました。

 

ーお母様からのハガキによると、卓球を始めたきっかけは台所でのおばあちゃんとの「テーブルピンポン」だと。

岡崎:気がついたら、おばあちゃんにつられて卓球で遊んでいて、面白そうやなって。最初はそんなつもりはなかったけど、気がついたら選手路線でやっていました。それでここまで来ちゃった感じですね。

 

ーそんなきっかけで始めた卓球ですけど、今もやっぱり楽しい?

岡崎:中学から卓球を始めたので、下から上がっていかないといけなかったぶん、しんどいこともありました。「もう嫌やなあ」って思うこともあったけど、それでも勝てたり、周りの人に褒めてもらったり、周りの人が喜んでくれるのがうれしくて続けてきました。

 

 以上が試合後の岡崎の言葉。試合を終えたばかりで、急に取材をされて「『成長できたよ』ということを少しでも長くコートで試合をすることで伝えたかった」なんて、なかなか言えるもんじゃないよなあと思う。それでいて、飾ったようなところもないし、なんとなく「卓球が好きで頑張ってきた、等身大の18歳」の言葉に触れられたようでうれしかった。きっと、そんな気持ちをずっと持ってインターハイまでの日々を過ごしてきたからこそ、「自分の言葉」として自然に口をついて出たんじゃないだろうか。

 「これからも卓球は続けるの?」と聞くと「まだはっきりは決めてないですけど、インターハイに出てみて『私でもやれるんじゃないか』って感じたので、大学でも体育会でやってみようかなって気持ちになりました」とのこと。そんな言葉を聞くと、インターハイ出場という目標に向かって努力して、その目標を叶えて、今度はその舞台で全力を出して、新しい自分の可能性に出会って、「頑張る」って良いなあと思う。

 取材後に「いつか卓球王国にインタビューされたいと思っていました」とうれしい言葉をくれた岡崎さん、また、どこかで会えたらいいなと思ってます。(編集部・浅野)

関連する記事