●男子シングルス1回戦
東政利(富田) ー6、ー5、6、3、5 舟山真弘(早大学院)
パラリンピックでの金メダル獲得を目指す東京・早大学院の3年生、舟山真弘が男子シングルス1回戦に登場した。
卓球王国9月号に掲載したインタビューも反響を呼んでいる舟山。4歳で小児がんの一種である「右上腕骨骨肉腫」を患い、利き手である右腕の肩関節と上腕骨を切除。左手にラケットを握って卓球を始め、中学3年で関東大会出場を果たしただけでなく、パラ選手の先輩である岩渕幸洋(東京パラリンピック日本代表)らが在籍した早稲田大で腕を磨くべく、超難関校の早稲田大学高等学院(早大学院)に一般受験で合格した努力家だ。
今大会も大会前は早稲田大で練習を積むなど、1日6〜7時間の練習時間を確保し、「調整はうまくいっていた」という舟山。同じ左腕の東(富田)に対し、1ゲーム目からエンジン全開のプレー。サービスから相手のフォアやミドルに叩き込むフォアドライブ、安定したバック連打でラリーを次々に制し、あっという間に2ゲームを先取する。「2ゲーム目までは本当に良かったですね」と舟山も振り返る。
しかし、3ゲーム目から次第に舟山に3球目攻撃のミスが多くなる。対戦相手の東も台から距離を取り、舟山の攻撃をしのぎ、回転をかけた両ハンドドライブでミスを誘う。試合はゲームオールまでもつれ、最終ゲームも中盤で突き放した東が逆転勝利を収めた。
「3ゲーム目から自分の中で少しすきができてしまった。自分のフォアの3球目攻撃が入らなくなってきて、逆に相手は思い切ってきて、そのマイナスとプラスで一気に追い抜かれてしまった。前半はバック対バックで相手を詰められていたのに、中盤から相手に距離を取られた時にまだ優位に立てなかった。守備の技術がまだ足りない。相手に距離を取られて、丁寧に回転をかけられた時にやることがなくなるのは今後の課題だと思います」(舟山)
昨年の全日本ジュニアは大会直前に新型コロナに感染したために棄権。高校3年で迎えたインターハイは、舟山にとって最初で最後の全国の舞台だった。
「本当にあっという間でした。やっぱり雰囲気にのまれた部分はあります。インターハイに出られたことはすごくうれしいことだし、これをどう活かすが今後の課題。このまま大学(早稲田大)でも卓球を続けるので、大学ではもっと勝てるように頑張っていきたい」(舟山)
ロビーの片隅での取材の最後、「あんなに大きく(インタビューを)載せていただいたのに、本当に申し訳ないです」と頭を下げた舟山。……決してそんなことはない。出足から積極一貫の勇気あふれるプレー、しっかり胸に刻ませてもらいました。ここからまた、新たなチャレンジだ。
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