●男子ダブルス1回戦
青山貴洋/高橋慶太(育英高) −10、9、7、10 大栗寛/森拓眞(徳島大正銀行/個人)
今大会の最年長プレーヤー、55歳の大栗寛(ゆたか)が男子ダブルス1回戦に登場。今や全日本ではほとんど見かけなくなった、右ペン表ソフトの速攻プレーヤーである大栗。レシーブでのフォアフリックに加え、ショートやツッツキでナックルのボールをうまく生かし、高校生ペアのミスを誘っていた。
さすがは百戦錬磨のテクニック。……それにしても相手ペアのミスが多いと感じていたが、大栗はフォア面にテンション系表ソフトの『スピネイト』(ヤサカ)、裏面に変化系表ソフトの『アタック8』(アームストロング)を貼り、反転させて球質を変化させていた。若手の回転とパワーに対抗するための工夫だ。
パートナーの森も序盤は硬さが見られたが、回転量の多いチキータやナックル性のブロックなどをうまく使い、相手のミスを誘っていた。一発の強打こそないものの、味のあるプレーを見せてくれた。
試合は1ゲーム目を逆転で奪うも、中盤までリードを奪った4ゲーム目を惜しくも逆転され、1ー3で惜敗。「1ゲーム目を取れたのは大きかったですが、最後はあと一本が足りなかったですね」と試合を振り返った。
大会最年長での出場に加え、25回目の全日本出場は三田村宗明(リトルキングス)と並ぶタイ記録。3年前の全日本出場時には「60歳で全日本に出たい」と語っていた大栗。これからも毎年県予選に出て、本大会を目指すという気持ちは変わらない。
「やっぱり全日本は特別な試合です。60歳でこの舞台に立ちたいし、それ以降も予選を通過できるように頑張っていきたい。徳島県卓球協会のほうで若手の指導もしているし、若手に強くなって自分を越えていってもらいたいという思いはあります。ただ、自分から譲るという気持ちはないですね」(大栗)。
現在の練習は「毎日やると腰が痛くなる」ということで、週3日ほど。大きな大会の直前には毎日ボールに触るようにしているが、基本練習やサービス練習など、練習量は軽めにするという。日々の練習の中で、卓球へのモチベーションが上がらない時はスパッとラケットを置き、趣味のゴルフなど別のスポーツをやって気分転換。やがてまた、卓球の虫がうずいてくる。
飽くまでも勝利を目指しながら、時には卓球との距離感を測りながら、ラケットを握り続ける徳島の鉄人プレーヤー。大栗寛の挑戦は続く。
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