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全日本卓球2022

張本智和が立ち尽くす全日本の壁。水谷の記録を塗り替えるだろうと言われた男の苦悩

4年前、14歳で史上最年少のシングルス優勝記録を作った張本智和。打球点の早い、いわゆるライジングでのバックハンドの連打で次々と大人の選手を連破し、決勝でも王者・水谷隼に完勝した。そのあまりの強さに、「水谷の9回(当時)の優勝記録を破るのは張本以外にいないだろう」と言われた。

当然だろう。14歳での圧倒的な優勝を見たら、10年後でもまだ24歳。通算優勝回数をどこまで伸ばすのだろうかと。
しかし、翌年は準決勝で大島祐哉に敗れ、次の年は決勝で宇田幸矢に敗れ、昨年は6回戦で及川瑞基に完敗した。

14歳で日本の頂点に立ったらどこまで強くなり、どこまで連勝するのだろうと思うが、成長曲線が単純に右肩上がりにいかないのが卓球の奥深いところだ。

張本のバックハンドのライジング強打でラリーの主導権を奪うスタイルは、体も小さく反応の良い時期に最適なやり方だった。しかし、その後、打倒中国、五輪での金メダルを目標にした張本はフォアハンドの強化に乗り出す。そういうアドバイスも周りから受けただろう。

彼のバックハンドは世界最高の武器だった。確かにフォアハンドはそれと比べれば心もとない。しかし、フォアハンドやフットワークを強化すればするほど、張本の台からの距離は遠くなっていき、バックハンド連打の打球点は徐々に遅くなる。もちろん体も大きくなり、俊敏さは14歳のときのほうがすぐれていたのかもしれない。

 

もちろんフォアハンドやフットワークの強化が彼自身を幾度も助けたのも事実だ。世界の頂点を目指す時、よりオールラウンドなプレースタイルを選択するのも理解できる。
だが、台から離れていくことによって張本の速攻は徐々に消えていくことになる。今大会で吉村真晴はもちろんだが、その前の高木和卓にしても、張本の連打に追いつき、中陣からカウンターで攻めた。4年前に追いつけなかった張本のピッチの速さに、吉村、高木和は対応することができていた。

 

練習量、経験量、体力は4年前よりもはるかにアップしている張本。しかし、その積算が強さの積算とイコールではない。記者席の横位置から見ていても、張本のバックハンドは前陣ではなく、中陣からの強打になっている。

張本は大きな期待を背負いながら、卓球という競技の最も奥深い部分に踏み込んでいる。単純なプレースタイルの問題なのか、打球点の問題なのか、それとも戦術で解決できるのか。
張本の苦悩に思いを馳せれば馳せるほど、今さらながら、水谷隼の10回という全日本優勝の記録の偉大さに呆然としてしまう。

 

 

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